煎じ薬(読み)センジグスリ

デジタル大辞泉 「煎じ薬」の意味・読み・例文・類語

せんじ‐ぐすり【煎じ薬】

生薬を煎じた飲み薬。煎薬せんやく
[類語]煎薬薬湯

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「煎じ薬」の意味・わかりやすい解説

煎じ薬
せんじぐすり

漢方処方の剤型の一つで、煎剤ともよぶ。漢方薬を服するときのもっとも一般的な剤型であり、世界各地の伝統医学、民間療法などでも行われる。一般的には複数の薬物処方し、その1日量に適量の水を加え、一定時間煎じ、その液を1日2、3回に分けて服用する。煎じる容器は鉄器・銅器を避け、土瓶、土鍋(どなべ)、アルミ製器などを用いる。また、煎薬専用の電気器具が市販されている。以下、漢方薬の煎じ薬をつくるに際しての特殊な注意事項を述べる。

[難波恒雄・御影雅幸]

別に煎じる処方

多くの麻黄(まおう)剤(麻黄を配合した処方。たとえば麻黄湯(とう)、麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)など)では、麻黄のみを先に煎じ、あとに他の薬物を加え煎じる。また、葛根湯(かっこんとう)の場合は、葛根と麻黄を先に煎じることになっている。このほか、小建中湯(しょうけんちゅうとう)や大建中湯(だいけんちゅうとう)に配合される膠飴(こうい)(麦芽糖で製した飴(あめ))では、他の薬物を先に煎じ、かすを取り去ってから、煎液に加え溶かす。同様に猪苓湯(ちょれいとう)や芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)に配合される阿膠(あきょう)(薬用の膠(にかわ))も、あとから煎液に加え溶かす。

[難波恒雄・御影雅幸]

酒を加えて煎じる処方

補剤(体力を補う目的の処方)のなかには、酒を加えて煎じたほうがより効果があるとされるものがいくつかある。この場合の酒は、清酒あるいは焼酎(しょうちゅう)が使用され、水と同量から2分の1量を加える。また、煎液に適量の酒が加えられることもある。こうした処方に相当するものとして炙甘草湯(しゃかんぞうとう)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)、芎帰膠艾湯、下瘀血湯(げおけつとう)などがある。

[難波恒雄・御影雅幸]

長時間煎じる処方

附子(ぶし)(キンポウゲ科トリカブトの塊根)が配合された処方は、他の処方よりも長時間煎じる必要がある。これは附子に含まれる有毒アルカロイドを加水分解して低毒化させるためで、一般には1時間以上煎じるのがよいとされている。これを行うことによって猛毒成分のアコニチンはアコニンに変化し、毒性は200分の1以下になる。この処方に相当するものに桂枝加附子湯(けいしかぶしとう)、朮附湯(じゅつぶとう)、甘草附子湯(かんぞうぶしとう)、附子湯(ぶしとう)、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)などがある。

[難波恒雄・御影雅幸]

服用方法

煎じ薬は、原則として1日3回、食前あるいは食間に温服(温めて飲む)するが、やむをえない場合には朝夕2回でもよい。また、吐き気のある場合は少量ずつ数回に分けて冷服(冷やして飲む)する。もし、服用後に胃腸障害がおこるようであれば処方を変える必要がある。

[難波恒雄・御影雅幸]

二番煎じ

煎じ薬の抽出率をよりあげるためには、二番煎じを行うのが好ましい。この場合、加える水および加熱時間は1回目の半分くらいでよい。服用に際しては一番目のものを2回に分け、二番煎じしたものは1回で服用するのが一般的であるが、両方をあわせて3回に分服しても差し支えない。

[難波恒雄・御影雅幸]

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