2種類の気体の混合物に温度傾斜を与えるとき,重い成分が低温方向に,軽い成分が高温側に移動する現象.S. Chapman(1916年)が理論的に予言し,まもなく実験的に証明された.たとえば,H2 とCO2の1:1混合物を管でつないだ二つのガラス容器に入れ,一方を200 ℃,他方を10 ℃ に保ち,平衡に達したのち分析すると,H2 は高温側で,低温側より全濃度の2.2% だけ多い.また,垂直に立てた円筒形ガラス管の中心軸にそって金属線を張り,これを加熱すると軽い成分は中心部に,重い成分は低温の管壁のほうに移動し,前者は対流によって上方に,後者は下方に集まる.この現象を利用して,同位元素の分離を行うことができる.熱拡散は気体混合物だけでなく,液体混合物にもみられる.熱拡散の現象は厳密な熱伝導の考察から理論的に導かれるが,距離上の分子間の反発力が r-5 に比例するときにはこの効果はみられない.
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…これも拡散現象であり,このように同種類の物質における拡散を自己拡散と呼ぶ。茶わんに熱い茶をいれると,しだいに外側まで熱くなってくるが,これは固体内での熱エネルギーの拡散現象で,熱拡散と呼ばれている。ただしストーブで部屋が暖まるのは対流によるもので,空気中における熱拡散はきわめて緩慢である。…
※「熱拡散」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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