熱源のもつ熱エネルギーをそれぞれの目的に応じて有効に利用するための技術で,エネルギー管理の一種。熱源として石炭,石油,天然ガスなどの燃料資源を扱うのが通常であるが,場合により原子力の熱,太陽熱,地熱,海洋熱などを考えることもある。熱管理の対象となる部門は,主として産業部門が中心であったが,近年は民生,業務,輸送部門にも広く行われるようになり,工場をはじめ建築物および自動車,家電などのエネルギー消費機器にまで及んでいる。
熱管理の内容は,(1)燃料の燃焼の合理化,(2)加熱,冷却,伝熱の合理化,(3)放射,伝導などによる熱の損失の防止,(4)廃熱の回収利用,(5)熱の動力などへの変換の合理化,を推進することである。それぞれの作業内容としては,適正な管理の標準値を定めてそれを実施すること,対象とする熱エネルギーに関する計測および記録を行うこと,熱設備の保守および点検を行うこと,熱エネルギーの利用効率を高めるべく改善措置を行うこと,高性能の設備の導入を検討すること,などである。
熱管理の日本における歴史は古く,昭和初期に大阪府などを中心に第1次大戦後の石炭価格の高騰とその後の石炭価格の不安定に対処して,石炭費の節減を行うべく燃焼技術の研究が行われた。1929年に燃焼技術者の養成と訓練の必要性から大阪府産業能率研究所に燃料指導部が設けられた。その後種々の変遷を経て,51年に熱管理法が制定された。これは,産業部門における燃料およびこれを熱源とする熱の有効利用を促進し,燃料資源の保全および企業の合理化を目ざしたもので,熱管理の役割が法律上明確になり,国家試験に合格すれば熱管理士の資格が与えられることとなった。とくに燃料などの使用の合理化を推進する必要がある工場は,熱管理指定工場とされて熱管理士を置くことが義務づけられた。その後,燃料の中心が石炭から石油や天然ガスへと移る一方,73年のオイル・ショックで石油価格が高騰するに及び,従来よりいっそう熱管理の必要性が叫ばれるようになり,その後の省エネルギー活動の中心的課題となった。そして,省エネルギー活動が産業部門にとどまらず,民生,業務,輸送などおよそエネルギーを使用する全部門で重要になったことに伴い,79年6月に〈エネルギーの使用の合理化に関する法律〉が制定され,より広範な内容での省エネルギーの推進が企てられるようになった。この法律の制定に伴い,従来の熱管理法は廃止され,熱管理士も新たに制定されたエネルギー管理士の一種として管理内容が拡大されることになった。エネルギー管理士免状は,熱管理士免状と電気管理士免状の2種類からなる。また,今まで熱管理の教育啓蒙普及に努めてきた財団法人熱エネルギー技術協会も,新しい法律の制定により財団法人省エネルギーセンターと改称され,事業内容が拡充されることになった。
→省エネルギー
執筆者:亀山 秀雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
熱エネルギーを有効に利用するための技術。熱エネルギーを利用するにはかならず低温の熱源に熱を流す必要があり、高温の熱エネルギーも利用のきわめて困難な低温の熱エネルギーに変化する。この低温の熱エネルギーはいくら大量にあってもそのままでは利用がむずかしいので、高温の熱エネルギーの有効な使用は燃料などの高温熱源の使用量に関係し、工業製品ではコストに影響を与える。工業製品などでは燃料費の占める割合が大きく、熱エネルギーを有効に利用できるか否かは企業の存続に影響を与えるほどで、熱管理が重要になってきている。
熱管理は燃料の管理、燃焼の管理、熱利用の管理からなる。燃料の管理は、使用目的に適合する燃料の選択、購入、運搬、貯蔵を適切に行う技術で、燃料の総コストを合理化する。燃焼の管理は、燃料の完全な燃焼、排ガスの処理の技術で、燃料を完全に、しかも不必要に高温の燃焼ガスにしない燃焼をさせ、排ガスを清浄に処理する技術である。最近は燃料供給などを効率的に自動制御で行うようになった。熱利用の管理は、高温ガスの熱を最大限に熱媒体に伝え、排熱を回収し、工場全体で熱エネルギーを必要温度にあわせ段階的に最大限に利用する技術である。石油などの燃料枯渇が問題となった現在、熱管理は重要度を増している。
[吉田正武]
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