日本大百科全書(ニッポニカ) 「燕京歳時記」の意味・わかりやすい解説
燕京歳時記
えんけいさいじき
中国、清(しん)代の北京(ペキン)における年中行事を記した本。1巻。敦崇(とんすう)(1854―1911)著。1906年秋、北京琉璃廠(ルリチャン)の文徳斎から刊行。『荊楚(けいそ)歳時記』『帝京景物略』『日下旧聞考(じっかきゅうぶんこう)』などの体裁と内容を参考にして、清末の燕京(北京の古名)とその周辺の年中行事を中心に、風俗、遊覧、技芸、物産などを、元旦(がんたん)から12月除夜まで月を追って述べている。本書は、ときに思い違いや疑わしいところもあるが、美しい簡潔な文章で、客観的に要領よくまとめられており、清朝末期の北京の風俗、名勝、古蹟を知るうえで便利である。また日本の年中行事や民俗との影響関係を考えるうえで参考になる。
[川越泰博]
『小野勝年訳『燕京歳時記――北京年中行事記』(平凡社・東洋文庫)』