物成(読み)モノナリ

デジタル大辞泉 「物成」の意味・読み・例文・類語

もの‐なり【物成】

田畑からの収穫
江戸時代年貢本途物成ほんとものなり小物成こものなりとがあったが、特に本途物成をさす。
禄高基礎となる年貢米の収入高。

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精選版 日本国語大辞典 「物成」の意味・読み・例文・類語

もの‐なり【物成】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 土地から産出するもの。田畑からの収穫。
    1. [初出の実例]「物なりはよき丹波路の秋ならし いつみるもただ栗の大きさ〈慶友〉」(出典:俳諧・犬子集(1633)九)
  3. 近世農民の負担した年々の租税のひとつ。本年貢をさす呼称として用いられ、雑税である小物成に対し、本途物成などと称した。取箇(とりか)成箇(なりか)
    1. [初出の実例]「当年は米にて物成六部の通に被置之」(出典:多聞院日記‐天正一八年(1590)一二月一五日)
  4. 領主家臣采地から上がる、一年間の年貢米収入高。年貢米を取り立てる総量。取箇(とりか)。成箇(なりか)
    1. [初出の実例]「上杉召抱への城〈略〉物成取立所廿三ケ所有之」(出典:上野国群馬郡蓑輪軍記(16C後)上)
  5. 割当て。割前の金。
    1. [初出の実例]「ものなりを納ぬもあり大一座」(出典:雑俳・末摘花(1776‐1801)初)
  6. 物価
    1. [初出の実例]「此物成(モノナ)りの高いのに、たださへ困る貧乏人、元を失ひ途方に暮れ」(出典:歌舞伎・鶴千歳曾我門松(野晒悟助)(1865)序幕)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「物成」の意味・わかりやすい解説

物成
ものなり

近世における、田畑の本租の呼称。年貢(ねんぐ)、取箇(とりか)、成箇(なりか)、本途(ほんと)(物成)などともよばれた。

[編集部]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「物成」の解説

物成
ものなり

田畑・屋敷地に課された本年貢。用語自体は鎌倉時代から租税の意味で存在したが,江戸時代に入って一般化した。年貢・成箇(なりか)・取箇ともいい,また雑税である小物成と区別し,本年貢としての意味から本途物成・本途・本途取米・本免などともよばれ,村高に年貢率(免)を乗じて決められた。米納が原則だったが,貨幣による代納も時代が下るにつれ多くなった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「物成」の意味・わかりやすい解説

物成
ものなり

江戸時代の年貢取箇 (とりか) ,成箇 (なりか) と同義。田畑の本租の意味で本途物成ともいう。これに対し諸種の雑税を小物成という。

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旺文社日本史事典 三訂版 「物成」の解説

物成
ものなり

江戸時代の年貢
鎌倉時代からの用語で江戸時代に一般化した。山野河海の用益・生産にかかる雑税を小物成 (こものなり) というのに対し,田畑の生産物にかかるものを本途 (ほんと) 物成といい,原則として米納であった。のち代銀納もあらわれ,物成銀ともいう。

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百科事典マイペディア 「物成」の意味・わかりやすい解説

物成【ものなり】

本途物成

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世界大百科事典(旧版)内の物成の言及

【秋成】より

…その徴収時期には初・中・末があって,初は7月15日から期限の明示なし,中は8月15日から9月1日まで,末は10月15日から11月晦日までとされている。近世になると,《地方(じかた)凡例録》(1794)によれば,関東で畑の年貢=物成(ものなり)を〈夏成〉と称したのに対し,田の年貢を〈秋成〉といったとされる。秋の物成であるから〈あきなり〉といわれた。…

【本途物成】より

…江戸時代の年貢で,田・畑・宅地など検地によって高に結ばれた土地に賦課された本年貢で,たんに本途または物成とも略す。同じく農民に賦課されたものであっても,山野・河川の用益に課せられた小物成(こものなり),冥加(みようが)・運上金などの浮役(うきやく),普請・助郷(すけごう)などに夫役(ぶやく)を提供する諸役と区別される。…

※「物成」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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