きわめて被害の大きな災害が起きた場合に、運転免許証の更新時期の延長など被災者の権利・利益を保護するための例外措置を認める法律。正式名称は「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」(平成8年法律第85号)。阪神・淡路大震災の際に、時限的に実施された特別な行政措置をまとめた法律で、1996年(平成8)に成立、施行された。特定非常災害は同法で「著しく異常かつ激甚な非常災害」と定義されており、(1)死者・行方不明者・負傷者・避難者などが多数発生し、(2)住宅が多数倒壊し、(3)交通やライフラインが広範囲にわたって途絶し、(4)地域全体の日常業務や業務環境が破壊された状態になる、などの条件を満たした災害が該当する。2022年(令和4)6月末時点で、特定非常災害には、1995年の阪神・淡路大震災、2004年(平成16)の新潟県中越地震、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、2018年の西日本豪雨、2019年の台風19号、2020年の7月豪雨(九州、長野県、岐阜県など)の7例が指定された。
特定非常災害は政令で指定され、被災者の権利や利益を保護するための例外措置は約200に上る。運転免許証の更新のほか、相続の承認・放棄、有価証券報告書の提出、保健所が行う飲食店の営業許可、薬局の休廃止届出、宅地建物取引業免許やマンション管理業者の登録などの期限が延長される。また災害で債務超過に陥った被災法人に対する裁判所の破産宣告が一定期間、留保・凍結され、建築基準法や景観法で2年以内と定められた仮設住宅の設置期間の延長などが可能となる。このほか家屋の倒壊などで起きる境界線紛争の民事調停の手数料などが免除される。特定非常災害への指定は、被災自治体の窓口業務の負担を軽減するねらいもある。
[矢野 武 2022年10月20日]
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