有価証券報告書(読み)ユウカショウケンホウコクショ

デジタル大辞泉 「有価証券報告書」の意味・読み・例文・類語

ゆうかしょうけん‐ほうこくしょ〔イウカシヨウケン‐〕【有価証券報告書】

有価証券を発行している企業が自社の情報を開示するために作成する報告書金融商品取引法により作成・提出が義務づけられている。有価証券の公正な取引や投資家の保護を目的とするもので、事業年度終了後3か月以内に金融庁に提出する。企業の概要・事業の状況・株式の状況・財務諸表などが記載されている。有報。

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共同通信ニュース用語解説 「有価証券報告書」の解説

有価証券報告書

株式や社債などの有価証券を発行する企業が、金融商品取引法に基づき、事業や財務従業員といった情報をまとめた書類。企業は事業年度終了後、国に提出する。投資家の重要な判断材料となり、重大な虚偽記載には懲役刑や罰金刑が科される。近年の報告内容の見直しに伴い、女性管理職の比率や男女賃金格差の開示などが義務付けられた。

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改訂新版 世界大百科事典 「有価証券報告書」の意味・わかりやすい解説

有価証券報告書 (ゆうかしょうけんほうこくしょ)

証券取引所に上場され,または証券業協会に登録されている有価証券の発行会社と,募集・売出しを行って有価証券届出書を提出した会社が,事業年度ごと(事業年度経過後3ヵ月以内)に大蔵大臣に提出しなければならない会社内容に関する報告書(証券取引法24条)。有価証券報告書は,大蔵省,会社の本店および主要な支店,証券取引所または証券業協会に備え置かれて,公衆の縦覧に供せられる(25条)。これは,有価証券の発行会社の内容を継続的に開示させて,当該有価証券の公正円滑な流通を維持し投資者を保護することを目的とするものである。有価証券報告書には,会社の概況,事業および営業の状況,設備の状況,経理の状況,企業集団等の状況など会社の内容に関する詳細な事項が記載される(24条)。企業集団等の状況として,連結財務諸表を提出しなければならない。提出される財務計算に関する書類は,公認会計士等の監査証明を受けなければならない(193条の2)。有価証券報告書に記載される財務諸表は,複数年度のものが表示されるだけでなくその内容は商法計算書類(281条)よりもはるかに詳細である。有価証券報告書は,その閲覧期間中に経理の状況を中心に大蔵省によって審査される。記載の不備等があれば,自主的な訂正あるいは訂正命令による訂正報告書の提出が必要となる。訂正報告書を提出した会社は,その旨を新聞紙上で公告することになる(24条の2-2項)。有価証券報告書を提出しなければならない会社は,半期報告書および臨時報告書を提出しなければならない(24条の5)。半期報告書は,事業年度開始6ヵ月後ごとに提出され,その記載内容は有価証券報告書の場合と同様であるが,中間財務諸表が要求される。有価証券報告書および半期報告書によって,流通市場における企業内容の開示(ディスクロージャー)が少なくとも半年に1回定期的になされることの意義は大きい。1974年の商法改正によって,その後ほとんどの会社が半年決算から1年決算へ移行したからである。しかし,アメリカでは四半期報告書の提出まで要求されており,将来は四半期報告書の採用が問題となろう。有価証券報告書および半期報告書は,主として専門家がこれを分析した情報を流すことによって,投資家がその内容を知ることを予定した間接開示である。これらの報告書の内容の多くは投資者に対して直接開示されるべきだとの議論もある。なお,有価証券報告書の不提出,虚偽記載等に対しては罰則規定があり,虚偽記載等に対しては厳しい民事責任が課せられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「有価証券報告書」の意味・わかりやすい解説

有価証券報告書
ゆうかしょうけんほうこくしょ
annual securities report

上場会社などが、投資家の保護のために毎事業年度ごとに提出する会社や事業の概況などの投資情報を記載した報告書。略して有報ともいう。上場会社などの会社情報がもっとも詳細に記載された報告書である。証券取引所に上場している会社や株主数が1000人以上の会社などは、金融商品取引法に基づき、企業の概況、事業の状況、設備の状況、提出会社の状況、経理の状況などを記載した報告書を事業年度の終了後3か月以内に内閣総理大臣に提出することが義務づけられている(金融商品取引法24条)。経理の状況に含まれる財務諸表には、公認会計士または監査法人による監査報告書が添付される(同法193条の2第1項)。なお、有価証券報告書の詳細な記載内容は、企業内容等の開示に関する内閣府令(15条)において規定されている。

 この有価証券報告書は、金融庁のホームページに掲載されているEDINET(エディネット)(「金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム」)により、インターネット上での閲覧が可能となっている。

[中村義人 2022年11月17日]

『ディスクロージャー&IR総合研究所編『記述情報・新会計基準対応 有価証券報告書の作成ガイドブック』(2021・中央経済社)』『新日本有限責任監査法人編『3つの視点で会社がわかる「有報」の読み方』第3版(2022・中央経済社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「有価証券報告書」の意味・わかりやすい解説

有価証券報告書
ゆうかしょうけんほうこくしょ
annual securities report

有価証券の発行者が事業年度経過後 3ヵ月以内に 3通作成して内閣総理大臣に提出すべき報告書。提出を義務づけられているのは,(1) 金融商品取引所に上場されている有価証券の発行者,(2) 流通状況が (1)の上場証券に準じるものとして内閣府令で定める有価証券(現実には店頭売買登録銘柄)の発行者,(3) 有価証券届出書を提出した有価証券の発行者。報告事項は,有価証券発行者の事業・資産内容に重点がおかれ,特に財務諸表については,財務諸表規則に準拠して作成されたあと監査人(監査法人または公認会計士)による監査が必要。また添付書類として,定款,営業報告書,重要な子会社の貸借対照表損益計算書などが必要である。有価証券報告書,添付書類および訂正報告書は,受理された日から 5年間内閣府に備えられ,その写しは提出会社の本店,主要支店に,さらに上場会社は上場金融商品取引所,店頭売買登録会社は登録証券業協会に備えられ,公衆の縦覧に供される。有価証券報告書制度は,投資家保護を目的として証券取引法で規定され, 2006年に金融商品取引法に引き継がれた。金融商品取引法では,有価証券報告書に記載された内容が適正であることを経営者みずからが確認したこと示す確認書の添付を義務づけた。

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知恵蔵 「有価証券報告書」の解説

有価証券報告書

証券取引法第24条に基づき、上場会社など有価証券発行者である会社が、事業年度終了後3カ月以内に、会社の目的、役員、営業及び経理等の状況及び事業の内容に関する重要事項を記載して内閣総理大臣に提出する書類。1年決算の会社は事業年度中間で半期報告書を提出する。これらは公認会計士または監査法人の監査証明を要し、仮に虚偽及び不実の記載がある場合、一定の制裁が科される。近年は、西武鉄道、カネボウなどの粉飾決算・虚偽記載などの事件が続き、有価証券報告書の信頼性が問われている。東京証券取引所は2005年1月から、上場会社に有価証券の発行者の代表者が、報告書の内容に関して、不実の記載がないと認識している旨及びその理由を記載した書面(有価証券報告書等の適正性に関する確認書)、及び有価証券の発行者の代表者が投資者への会社情報の適時適切な提供について真摯な姿勢で臨む旨を宣誓した書面(適時開示に係る宣誓書)の提出を求め、信頼の回復に努めている。

(小山明宏 学習院大学教授 / 2007年)

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「有価証券報告書」の解説

有価証券報告書

企業の概況、事業内容、設備状況、営業状況、財務諸表などが記載されている報告書。証券取引法が提示している3つの条件のいずれかに該当する有価証券を発行している企業は、事業年度が終わるごとの提出が義務付けられている。証券取引法が提示する条件とは(1)証券取引所に上場されている有価証券であること、もしくはそれに準ずると政令で定められている有価証券であること(2)募集または売り出しの際、有価証券の総額が1億円以上であること(3)過去5年間において、事業年度末日時点の有価証券所有者が500人以上となること、である。

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M&A用語集 「有価証券報告書」の解説

有価証券報告書

株式を公開している会社等が、事業年度ごとに、その事業年度の終了後3ヶ月以内に提出を義務付けられている書類。投資家が投資を行う際に十分投資判断ができるように、事業の状況、財務状態、経営成績などの財務諸表を記載したものが公表される。

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株式公開用語辞典 「有価証券報告書」の解説

有価証券報告書

株式を証券取引所に上場した会社、および有価証券届出書を提出した会社は、各事業年度終了後3カ月以内に、内閣総理大臣に提出を義務づけられている。その書類のことを有価証券報告書という。

出典 株式公開支援専門会社(株)イーコンサルタント株式公開用語辞典について 情報

投資信託の用語集 「有価証券報告書」の解説

有価証券報告書


有価証券を発行した後、その後の有価証券の状況を知らせるための報告書のこと。財務局に届け出なければならない。

出典 (社)投資信託協会投資信託の用語集について 情報

世界大百科事典(旧版)内の有価証券報告書の言及

【財務諸表】より

… 証券取引法の財務諸表規則(証取規則)は企業会計原則にのっとったものであるが,その規定によれば,発行価額または売出価額の総額が1億円以上の有価証券を募集または売り出すさいには大蔵大臣への届出が必要であるが,この届出のさい,その発行者は特別な利害関係のない公認会計士または監査法人の監査証明をうけた財務諸表を含めた有価証券届出書を提出しなければならない。また,証券取引所に上場されている有価証券を発行している会社,流通状況が上場されている有価証券に準ずるものとして政令で定める有価証券を発行している会社,上記の有価証券届出書の提出会社は事業年度ごとに,特別な利害関係のない公認会計士または監査法人の監査証明をうけた財務諸表を含めた有価証券報告書を提出しなければならない。この有価証券届出書および同報告書の中に含められる財務書類は,大蔵省令〈財務諸表等の用語,様式及び作成方法に関する規則(財務諸表規則)〉および〈財務諸表等の用語,様式及び作成方法に関する規則取扱要領(財務諸表規則取扱要領)〉にしたがって作成されなければならない。…

【財務分析】より

…この場合には,一般投資家を保護する目的で制定された証券取引法の適用がある。そのため有価証券報告書を作成し大蔵大臣に提出する義務を負うこととなる。そして有価証券報告書は,大蔵省,取引所および企業において,一般の閲覧に供されることになる。…

※「有価証券報告書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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