特発性てんかん(読み)とくはつせいてんかん(英語表記)Idiopathic epilepsy

六訂版 家庭医学大全科 「特発性てんかん」の解説

特発性てんかん
とくはつせいてんかん
Idiopathic epilepsy
(脳・神経・筋の病気)

どんな病気か

 特発性てんかんにも、部分てんかんと全般てんかんがありますが、こちらの病気ではその大部分は全般てんかんです。脳の深部の意識覚醒(かくせい)に関係する部位に突然の電気的異常が発生し、そのため発作の最初から体の両側に症状がみられ、脳波でも両側性の異常が対称性にみられます。

原因は何か

 その原因は不明であり、MRICTを用いて脳を検査してもまったく異常は見つかっていません。しかし、その起こりやすさに遺伝的な要素が関係していると考えられ、ある年齢で発作が出現し、ある年齢が来ると自然に発作回数が減り、発作が起こらなくなることが多くみられます。

 ただし、てんかんそのものが代々遺伝するわけでは決してありません。

症状の現れ方

 新生児期にだけみられる良性の家族性けいれん発作や、家族性でないものがあります。小児期に発症するのがほとんどであり、非けいれん性の意識消失からなる欠神(けっしん)発作は5~10歳に始まり、治療をしないと20歳ごろまで続きます。

 これは何の前ぶれもなく、突然に意識がなくなりますが、決して姿勢が崩れたり転倒することはありません。突然進行中の行動、会話などが止まり、眼は1点を見つめてうつろとなり、1秒に3回ほどのまたたきをして数秒あるいは1分間で元の状態にもどり、前の行動を継続できる発作です。

 また、全身のけいれんからなる強直(きょうちょく)発作、間代(かんたい)発作、強直間代発作もみられます。これらは主に25歳までにみられる発作で、全身の筋肉が同時に収縮して手足がつっぱり、呼吸筋も収縮を持続するので呼吸が不可能となります。顔色チアノーゼ(赤紫色)となります。眼は見開いたまま眼球が上転し、全身の筋肉が収縮するので背中を弓なりに曲げて反る姿勢を続けます。

 しばしば舌をかみ、口から出血がみられます。通常は数分で徐々に筋収縮(ゆる)み、手足を曲げたり伸ばしたりする発作に移行します。この間呼吸不能の状態が続きます。

 発作が短時間で自然におさまっても、発作後には意識がもうろうとして、会話がしばらくはできません。普通、発作後には眠りに入ります。

 ほかに思春期にみられる若年性ミオクローヌスてんかんや、脱力発作を症状とする全般てんかんもまれにあります。

検査と診断

 脳波記録が不可欠です。脳波では左右両側性の対称性てんかん性異常放電があることから診断され、MRIではまったく異常がみられません。ほかの検査で異常がみられることもほとんどありません。

治療の方法

 使用する薬物としては、十分な医学的証拠のあるバルプロ酸ナトリウム(デパケン)が第一選択薬となります。欠神発作はこれだけで十分治療できます。またこの発作型にのみエトスクシミド(ザロンチン)が極めて特異的に有効で、発作の再発はほとんどみられません。

 それ以外の全般発作では、発作が完全に抑えられない時にはラモトリジン(ラミクタール)、フェニトイン(アレビアチン)かカルバマゼピン(テグレトール)が第二選択薬として加えられます。特発性てんかんには外科的治療は推奨できません。

 治りにくい場合には、根気よく2剤、3剤と薬の種類を増やして薬物治療が続けられます。ベンゾジアゼピン系の抗てんかん薬(クロナゼパム、クロバザム)も使用されます。

 2年以上にわたり発作が一度も起こっておらず、脳波もほぼ正常となった場合には、抗てんかん薬の減量、中止を考えてもよいとされています。

 しかし、発作の再発が薬の中断者の数~十数%にみられることから、勤務や自動車運転の必要性などの社会的状態を十分に考慮して、医師とよく相談しましょう。

廣瀨 源二郎

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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