特発性大腿骨頭壊死(読み)とくはつせいだいたいこっとうえし

家庭医学館 「特発性大腿骨頭壊死」の解説

とくはつせいだいたいこっとうえし【特発性大腿骨頭壊死】

[どんな病気か]
 大腿骨骨頭部分が壊死におちいる病気を、大腿骨頭壊死(だいたいこっとうえし)といいます。
 このうち、壊死になった原因がはっきりわからないものが、特発性大腿骨頭壊死です。
 同じ大腿骨頭壊死でも、ある程度の原因がわかっているもの、たとえばアルコール飲料多飲が原因と考えられるものはアルコール性大腿骨頭壊死、副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン(ステロイド薬)の使用が原因と考えられるものはステロイド性大腿骨頭壊死などと呼びます。
[症状]
 多くは、急性におこる股関節(こかんせつ)の痛みで始まります。なかには、坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)のような痛み(おしりから大腿部にかけての痛み)がおこることもあります。
 初期には、安静にしていれば痛みはひくのですが、しだいに痛みが持続するようになります。
 関節の動きの制限も、はじめはたいしたことはありませんが、病気が進むにつれて、歩行困難などの運動制限がおこってきます。
[治療]
 安静や薬物による保存的治療では効果が少ないため、早期に外科的手術を行なうほうがよいとされています。
 比較的若い人におこることが多い病気なので、関節の機能を失わないように、大腿骨頭前方回転骨切り術や骨移植術など、さまざまな骨頭温存手術が行なわれます。
 骨頭の破壊が進んでいる場合は、人工骨頭置換術などの人工関節置換術(関節手術のいろいろの「関節手術の分類」)なども選択されます。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「特発性大腿骨頭壊死」の意味・わかりやすい解説

特発性大腿骨頭壊死
とくはつせいだいたいこっとうえし
idiopathic necrosis of the femoral head

大腿骨の血流がなんらかの原因で止って組織の壊死が起り,骨頭部がつぶれて変形する病気。大腿骨頭は骨盤とともに股間節を形づくっているため,この部分が壊れると股間節から膝にかけて激痛が走り,歩行困難になる。 30~40歳代を中心に年間 1000~2000人の患者が発生し,難病に指定されている。厚生労働省研究班の調査では飲酒喫煙との関係や副腎皮質ホルモン剤服用との関係も疑われている。有効な治療法はなく,安静のほかギプス固定,人工股間節の移植などの手術療法が行われている。

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世界大百科事典(旧版)内の特発性大腿骨頭壊死の言及

【虚血性骨壊死】より

…原因不明のものは特発性骨壊死idiopathic necrosisと呼ばれる。これには成人の特発性大腿骨頭壊死,ペルテス病(小児大腿骨頭壊死),膝特発性壊死(高齢者大腿骨内顆関節面の病変),キーンベック病(成人月状骨壊死),ケーラー病(小児の足の舟状骨病変),フライバーグ病(第2ケーラー病ともいわれ,思春期の第2中足骨頭の病変)などがある。成人の特発性大腿骨頭壊死は1960年以降症例が急増し,アルコール愛飲,肝臓障害との関連が検討されている。…

※「特発性大腿骨頭壊死」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」