坐骨神経に沿っておこる激しい神経痛で、大部分は外傷による腰仙椎(ようせんつい)の椎間板ヘルニアで坐骨神経根が圧迫されるためにおこる。腰椎の変形性脊椎(せきつい)症を伴っていることも少なくないが、まれには癌(がん)の転移やカリエス、糖尿病などによる坐骨神経の障害が原因のこともある。壮年の男性に多く、ぎっくり腰や重い荷物を担いだ拍子に激痛が腰から足先にかけておこることが多い。痛みは寝返りや中腰、立ち上がりなど体の位置を変えるときに激しくおこりやすい。激しい放散痛とともに、坐骨神経、ことに圧迫された知覚神経に沿って感覚の鈍麻と足の背屈などの筋力が低下してくる。安静にして寝ていれば痛みはやや軽くなるが、足を伸ばしたまま上に高くあげると坐骨神経が引っ張られて激痛を生じ、診断の決め手となる。これをラセグ徴候Lasègue signという。
治療は、安静とともにアスピリンなどの鎮痛剤や神経の浮腫(ふしゅ)をとるためにステロイド剤を投与する。痛みがすこし軽減したら牽引(けんいん)療法で圧迫を除去し、コルセットを着用して保存療法を行う。神経ブロック療法なども行われる。大部分は保存療法で軽快するが、症状が重度の場合には椎弓切除その他外科的療法が必要な場合も少なくない。
[里吉営二郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報