独立権は,国家の基本権の一つとしてあげられることもあるが,近年は,これを一つの権利とせず,主権の一側面として把握する傾向が顕著である。すなわち,主権概念には二つの側面が含まれる。第1は対内的な側面であって,国家権力の国内における最高性または最高性を有する国家権力そのものを意味する。したがって,対内主権としての主権は,領域権と同じ意味になる。第2は対外的な側面であって,国家が外部の支配に従属しないこと,または,そのような国家権力そのものを意味する。したがって,対外主権としての主権は,独立権と同じ意味になると説明される。日本国憲法前文(3段)の〈……政治道徳の法則は,普遍的なものであり,この法則に従ふことは,自国の主権を維持し,他国と対等関係に立たうとする各国の責務である……〉でいう〈主権〉は,まさに独立権と同じ意味である。このように,主権の一側面が独立権ということになるならば,〈外部の支配に従属しない〉国家のことを,主権国家といってもいいし,独立国といってもいい。主権国家は,条約および国際慣習を通じて,種々の権利・義務をもつ。したがって,国家が種々の義務を負うことは,独立権と矛盾しない。しかし,だからといって,どんな条約を結び,どんな義務を負っても,独立権はそこなわれないとはいえない。弱い主権国家が強い主権国家と保護条約を結んで被保護国となる場合,その独立権は制限され,その国家は,半主権国,不独立国などと呼ばれることになる。
→主権
執筆者:松田 幹夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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