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猥褻罪 わいせつざい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

猥褻罪
わいせつざい

公然猥褻罪,猥褻文書等頒布罪,強制猥褻罪強姦罪など (刑法 174~182) を総称して呼ぶこともあるが,狭義には前2者をさす。猥褻とは,いたずらに性欲を興奮または刺激させ,かつ普通の人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為または物の属性をいうとするのが判例である。公然猥褻罪とは公然と猥褻な態度をとることによって成立する罪であり,猥褻文書等頒布罪は,猥褻の文書,図画その他の物を頒布,販売し,公然と陳列することによって成立する。本罪の適用については,学術・芸術作品,特に文芸作品について芸術性との関係をめぐって問題となることが多く,有名な裁判として,1957年判決が出されたチャタレー事件,69年の悪徳の栄え事件,80年の四畳半襖の下張り事件などがある。

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百科事典マイペディアの解説

猥褻罪【わいせつざい】

猥褻とは,いたずらに性欲を興奮・刺激させ,正常な性的羞恥(しゅうち)心を害し,善良の性的道義観念に反するものとされ(判例),猥褻罪には3種の態様がある(刑法174条以下)。
→関連項目親告罪

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大辞林 第三版の解説

わいせつざい【猥褻罪】

刑法に定められている公然猥褻罪・猥褻物頒布罪・強制猥褻罪などの総称。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

猥褻罪
わいせつざい

猥褻な行為を行い性道徳や性風俗を害する罪。[名和鐵郎]

本罪の本質

刑法第二編第22章の「わいせつ、姦淫(かんいん)及び重婚の罪」の章は以下のような猥褻行為に関する罪を設けている。公然猥褻罪(174条)、猥褻物頒布罪(175条)、強制猥褻罪(176条)、強姦罪(177条)、淫行勧誘罪(182条)、重婚罪(184条)がそれである。刑法は、これらの罪が性にかかわる罪であり、社会法益としての健全な性道徳または性風俗を害する点で共通性があるものという考え方にたっている。しかし、今日の学説では、このうち、強制猥褻罪、強姦罪は個人の性的自由を侵害する点に本質があるし、淫行勧誘罪もこれに重点があるものと理解する考え方が支配的である。また、重婚罪は、むしろ一夫一婦制を基本とする婚姻制度の保護を目的とする罪と考える見解が支配的になりつつある。この意味において、本章の罪のうち、公然猥褻罪および猥褻物頒布罪をここにいう「猥褻罪」として論じることが適当であろう。なお、この意味の猥褻罪についても、通説、判例のように健全な性道徳・性風俗に対する罪と理解するのではなく、むしろ公衆の性的感情に対する罪と解する見解が有力に主張されている。[名和鐵郎]

現行法の規定と解釈

公然猥褻罪、猥褻物頒布罪に関する規定は次のようである。公然猥褻罪とは、「公然とわいせつな行為をする罪」であり、6月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料に処せられる(刑法174条)。猥褻物頒布罪は、「わいせつな文書、図画その他の物を頒布もしくは販売し、または公然と陳列する罪」であり、2年以下の懲役または250万円以下の罰金もしくは科料に処せられる。販売の目的でこれを所持した場合も同じである(同法175条)。まず、これらの罪では、「わいせつ」の概念が共通の問題となる。判例は、「徒(いたず)らに性欲を興奮又は刺激せしめ且つ普通人の正常な性的羞恥(しゅうち)心を害し善良な性的道義観念に反する」ことと定義しており、学説もこれを支持する人が多い。この猥褻性は一般社会人を前提とする社会通念により判断される。ただ、何が猥褻にあたるかは相対的であり、不明確すぎるという批判もある。そのため、とくに猥褻性と芸術性との関係につきしばしば争われる。すなわち、エロ・ショーなどの公演が公然猥褻罪にあたるか、また、性に関する書物、映画、写真などが猥褻物頒布罪にあたるか、が文芸裁判として争われている。たとえば、小説ではローレンスの『チャタレイ夫人の恋人』やサドの『悪徳の栄え』など、映画では『黒い雪』などがそれである。[名和鐵郎]

猥褻性と芸術性

文芸作品はかりに猥褻な表現がその一部に含まれていても、その文学性や芸術性のゆえに刑法上の猥褻罪の適用を免れうるか。この点につき、判例や多くの学説は両者が次元を異にするという理由から、猥褻な表現が一部であれ含まれている以上、いかに芸術性が高くても猥褻罪の適用を免れないと解している。これに対して、学説のなかには、憲法の保障する表現の自由などを根拠に、両者は同次元の問題であり、全体的考察が必要であるとして、芸術性が高ければ高いほど猥褻性は減殺されるから、本罪の成立は否定されるべきである、とする見解もある。[名和鐵郎]
『中山研一著『刑事法研究第5巻 わいせつ罪の可罰性』(1994・成文堂) ▽奥平康弘・環昌一・吉行淳之介著『性表現の自由』(1986・有斐閣) ▽伊藤整著『裁判』上・下巻(1997・晶文社)』

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