獣害(読み)ジュウガイ

デジタル大辞泉 「獣害」の意味・読み・例文・類語

じゅう‐がい〔ジウ‐〕【獣害】

イノシシシカクマサルネズミなどの動物による被害。「農作物獣害対策」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「獣害」の意味・わかりやすい解説

獣害 (じゅうがい)

草食獣などによる農林水産物の食害猛獣による人畜への加害,齧歯(げつし)類などにより感染される伝染病のまんえんなど,直接・間接を問わず,哺乳類が人類の生活上に不利益をもたらす現象をいう。その代表的なものとしてネズミ害があげられる。すなわち,ノネズミによるイネ,ムギ,サツマイモなどの農作物や,ヒノキ,スギなどの植栽木の食害をはじめとし,イエ(家)ネズミによる貯蔵穀物や家畜飼料の食害や汚染,器物や電信・信号ケーブルの咬害(こうがい),さらにネズミ類のノミ,ダニなどの外部寄生虫や内部寄生虫,あるいは病原菌によって感染するペスト,発疹熱,ツツガムシ病,鼠咬(そこう)症,流行性出血熱など,恐るべき病気のまんえんなど,衛生上の害も知られている。ノネズミによる農林業上の損害だけで,年間数十億~数百億円に達すると推定されている。このほかに,ノウサギ,イノシシ,シカ,カモシカ,サル,ツキノワグマなどによる農作物や植栽木の被害が多く発生している。また,イタチ,キツネ,イルカ,トドなどによる水産業の被害もみられる。さらにヒグマ,ツキノワグマ,野犬による人畜の殺傷も問題となっている。とくに最近話題となったものとして,カモシカによる林業での被害があげられる。カモシカは特別天然記念物(1955年指定)で,日本固有の動物として保護されてきたが,これまでの保護による生息数の増加が,植栽木の食害につながるとする林業経営者と,開発や森林伐採による自然環境の破壊が原因とする自然保護者との対立から,その被害が社会問題にまで発展した。現在,文化,環境,林野の3庁協議で,南・北アルプス,青森県下北半島地域に,それぞれカモシカ保護区域が設定され,保護区域内で保護増殖を図るとともに,保護区域外では生息密度を調整し,林業とカモシカの共存共栄を図る保護施策が進められている。
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