人の生活に依存しないイヌをいう。家犬(かけん)(家畜のイヌ)は、生活様式からみて三つに分けることができる。一つ目は明確に飼育者がわかるもので、普通の家庭犬や作業犬などがこれにあたる。二つ目は飼育者ははっきりしないが、市街地を徘徊(はいかい)し人の残りものを食料源として暮らす、いわゆるのら犬である。かつては家庭犬であったものが、捨てられたり迷い犬になったりしてのら犬化することが多い。三つ目が野犬で、人とはほとんど接触をもたず、山野、丘陵地に自活し、人の生活に依存せず自ら狩りを行う。日本でも地域によってはニホンジカを狩っている例もあり、養鶏場を襲うこともある。野犬は本来は家庭犬から出たものである。捨て犬、迷い犬が山野に生き残り、自然繁殖して野生化したもので、真の野生種のイヌ科動物とは異なる。多頭数になれば、地域の野生動物、畜産業を営む人に影響を及ぼすので、イヌを飼育する場合は、安易な捨て犬などは慎まなければならない。
[増井光子]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…一方,ペットとしての犬飼育も,《枕草子》などに,そのあとをとどめている。反面,都市における野犬の横行も早くからのことであった。13世紀初頭に宮中の故実を記した《禁秘御抄》には,宮中諸所の縁の下から犬を狩り出して弓で射る〈犬狩り〉行事での近年の乱れが指摘され,《明月記》(1235)などの貴族の日記には,しばしば犬が宮中や邸内を汚す記事があり,ときには人骨をくわえこんだこともあった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」