獲麟(読み)かくりん

故事成語を知る辞典の解説

獲麟

文章を書き終えること。転じて、ものごとの終わり。また、死ぬことや、死ぬ直前に残す辞世の歌やのこと。

[使用例] さて、古聖人の獲を気取るわけでもないけれど、聖戦下の新津軽風土記も、作者のこの獲友の告白を以て、ひとまずペンをとどめて大過ないかと思われる[太宰治*津軽|1944]

[由来] 紀元前八~五世紀のことを記録した中国の歴史書、「春秋」の本文が、「西のかた狩りしてりんたり(西の方で狩猟をして、りんをつかまえた)」という記事で終わっているところから。「麒麟」とは、現在でいうキリンではなく、理想的な帝王が出現するときに現れると信じられていた、想像上の動物のこと。乱世にそのような聖なる動物が捕獲されたことを嘆いた孔子は、そのできごとを、自分で整理編集していた「春秋」に書き込み、しばらくして亡くなった、と伝えられています。そこから転じて、死ぬことや、時世の歌や句などをも指すようになりました。

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精選版 日本国語大辞典の解説

かく‐りん クヮク‥【獲麟】

〘名〙 (「麟」は麒麟(きりん)。聖人が出て王道の行なわれる時に現われるという想像上の獣)
① (「春秋‐哀公一四年」の「春西狩獲麟」による) 麒麟を捕獲すること。また、魯の哀公が麒麟を捕えたという事件。また、その年。紀元前四八一年。
※神皇正統記(1339‐43)上「広雅と云書には開闢より獲麟に至りて二百七十六万歳とも云」 〔劉琨‐重贈盧諶詩〕
② (孔子が筆を加えたという「春秋」が、「西狩獲麟」の句で終わっているところから) 絶筆、物事の終わり。転じて、一般的に、臨終、辞世をいう。
※和漢朗詠(1018頃)下「贈爵の新恩は銘石に刻む。獲麟の後集は世丘を知る〈大江以言〉」 〔元和本下学集(1617)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

獲麟
かくりん

文章を書くことをやめること、絶筆、擱筆(かくひつ)の意から、転じて、物事の終わりの意となり、さらに孔子の死、臨終、辞世の意ともなった。「獲麟」とは麒麟(きりん)を得たとの意で、中国春秋時代に魯(ろ)の哀公(あいこう)が西方に狩りをし、麒麟をとらえたという故事によるが、孔子が『春秋』を著したとき、「哀公一四年春西狩獲麟」と書いて筆を絶ち、世を去ったと伝えられることによって、上記のような種々の意味に転用される。

[田所義行]

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