改訂新版 世界大百科事典 「理趣三昧」の意味・わかりやすい解説
理趣三昧 (りしゅざんまい)
仏事の法要名。《理趣経》を中心とした密教立(みつきようだて)の法要。真言系諸宗で勤め,護摩供(ごまく)とともにもっとも多用される。大壇(だいだん)またはその略式の修法壇を設け,その前の礼盤(らいはん)に導師が登って〈理趣法(理趣経法)〉の修法をする。職衆(しきしゆう)はその間に声明(しようみよう)を唱え,読経を行う。晴れの法要では,中心となる《理趣経》の読経は,各段の初めにフシの付く《中曲理趣経》を用い,その最末部の〈善哉善哉(せんざいせんざい)……〉のくだりで華麗な曲節が聞かれる。また経の本文に前置される〈勧請句(かんじようく)〉や,後置される〈合殺(かつさつ)〉(毘盧舎那仏(ひろしやだふ)の連呼)にもこまかな曲節がある。以上の〈経段〉をはさんで前讃・後讃(正式には各3曲)の〈讃〉を唱え,さらにその前に導師の発声による〈唱礼(しようれい)〉が唱えられる。なおていねいな形式だと,これら以前の導入部に《唄(ばい)》《散花(さんげ)》《対揚(たいよう)》などの曲が付く。逆に,〈唱礼〉と〈経段〉だけという程度の構成で,フシも付けないごく略式の勤め方もあり,常用される法要だけに変化の幅が広い。なお〈理趣三昧〉には〈金剛界立(こんごうかいだて)〉〈胎蔵界立〉の2種があり,その区別により修法の内容も声明曲の種類も違ってくる。〈理趣三昧〉の応用として,導師がたとえば〈薬師法〉などの他の修法を勤め,職衆が〈理趣三昧〉の次第に従って声明等を唱えるといった法要があるが,これは〈理趣三昧〉が法要の基本形の一つとして定着しているからである。
執筆者:横道 万里雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報