出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
大乗仏教の最初期の経典。仏の真実の境地に至る道(理趣)を示せる経を意味する。具名(ぐみょう)を『般若(はんにゃ)理趣経』という。また不空(ふくう)訳では、『大楽金剛(だいらくこんごう)不空真実三摩耶(さんまや)経』が具名で、「般若波羅蜜多(はらみった)理趣品(ぼん)」が異名であるとされ、その逆に解釈することもある。後期の『般若経』の一つで、『大般若経』の547巻の「理趣品」の発展形態である。密教経典の一つとしてみれば、第六全の『金剛頂経』の一部(大楽最上経)とも解釈できる。要するに本経は、大乗仏教の極地である「般若=空」の思想が発展の極地に達し、いまや、空より不空、不空真実の境地を示すに至ったと理解すべきものである。空は理念上の境地でなく、実践のすべてを自由無礙(むげ)たらしめる無執着の境地を意味するに至った。ここを示すため、いまやこの経典を示す説法の場は「他化自在天王宮」の中となり、説法の主は薄伽梵毘盧遮那如来(ばがぼんびるしゃなにょらい)となり、すべて従来の現実のインドの舞台を離れて、完全に秘密の仏国土に移っている。徹底した現実肯定の「不空」「大楽」の世界観の背後には、強い自己調伏(ちょうぶく)(降伏(ごうぶく))の道が示されている。本経は、密教の極意を示すものとして真言宗では常に読踊(どくじゅ)される。
[金岡秀友]
『八田幸雄編『梵蔵漢対照 理趣経索引』(1974・平楽寺書店)』
密教経典の一つ。原題はサンスクリットで《プラジュニャーパーラミターナヤ・シャタパンチャシャティカーPrajñāpāramitānaya-śatapañcaśatikā》(《般若波羅蜜多理趣百五十頌》)。サンスクリット原典は部分的にしか残っていない。チベット語訳および漢訳6種が現存する。一般に用いられるのは不空訳(8世紀後半)の《大楽金剛不空真実三摩耶経般若理趣品》である。般若経典の一つであるが(玄奘による訳名《大般若経第十会,般若理趣分》),内容は純然たる密教経典で,真実の理法そのものである法身の大日如来が金剛薩埵(こんごうさつた)のために般若の理趣(根本の理法)を説いたものとされる。衆生の本性は清浄であり,この身のままで仏の境地に達することができると説き(即身成仏),人間の欲望を大胆に肯定している。最澄,空海らによって日本に将来され,とくに真言宗で尊重され,日常読誦される。
執筆者:末木 文美士
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…仏事の法要名。《理趣経》を中心とした密教立(みつきようだて)の法要。真言系諸宗で勤め,護摩供(ごまく)とともにもっとも多用される。…
※「理趣経」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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