第一音節を濁ってズホウと発音するのは後世で、古くは清音ではじまる語であったらしい。ただし、中古仮名文では通常「すほう(すほふ)」と表記されるが、「色葉字類抄」には「シュホウ」とあり、発音は「シュホウ」であったかもしれない。
密教で用いられることばで、「すほう」「ずほう」とも読む。ある目標のために身心を傾注し、それに向かわしめるための事作法(実践行)をいう。一般的には加持祈祷(かじきとう)の法と解される。修法の極致は、即身成仏(じょうぶつ)への実践行にほかならない。壇を設け、供養(くよう)物を献じ、本尊を請(しょう)じて、真言(しんごん)を唱え、手に印を結び、心に本尊を観ずるなど観念を凝らして法を修する。修法の組織によって、大法・秘法・普通法に分類される。また、大日・不動・聖天(しょうでん)・薬師・鬼子母(きしも)・観音(かんのん)など、本尊の相違によって種々の名称がつけられる。修法の種類はきわめて多いが、要約すれば息災(そくさい)法・増益(そうやく)法・降伏(ごうぶく)法・敬愛(けいあい)法の四種法にまとめられる。
息災法とは、天変・地異、あるいは自分自身の病難・火難などの災害を除き去る法であるが、その目的は心のなかの煩悩(ぼんのう)を除いて、菩提(ぼだい)(悟り)を完成させるためのものである。
増益法とは、大衆あるいは自身の福利を増し、寿命を延ばし、幸福を受けせしめる法であるが、その目的は凡夫(ぼんぶ)から菩薩(ぼさつ)、菩薩から仏へと出世間の福智(ふくち)の徳を一身に集めて、成仏の位階を進めるための法である。
降伏法とは、外には国家、あるいは自身に敵対するものを降伏させ、もし強固で降伏しないときは、ついに命を断って死滅せしめる法であるが、究極的には心のなかの貪(とん)・瞋(じん)・痴(ち)等の煩悩妄執(もうじゅう)を断つための法である。
敬愛法とは、多くの人々の尊敬愛護を受けせしめる法であり、ひいては諸仏菩薩の加護を受け、成仏の大目的を達するための法である。
また、この四種法に鉤召(こうちょう)法(本尊を召請するために修する法)を加えて五種法とする。
このように祈祷の作法である修法は、外面的には、ある有限の事柄を諸仏に祈り、その加護を請うもののようであるが、内面的には、有限の事柄に即し、絶対無限の自分自身の大生命を体得しようとするものである。
[小野塚幾澄]
密教の教理を実現するための実践方法の総称。修行法,行法ともいう。経典にもとづいて修法壇を設け,いろいろな仏を本尊として,供物をささげ,手に印を結び,口に真言を唱え,心に本尊を念ずる。修行者と本尊が一体化することによって,成仏したりさまざまな目的を達成しようとする。その順序はインドの貴賓饗応の方法を,密教の教理によって組織したものである。目的により息災法,増益(ぞうやく)法,調伏(ちようぶく)(降伏)法,敬愛法などに分けられ,組織・内容によって大法,秘法,普通法の区別がある。また,内容の主とするところにより,念誦法,供養法,護摩法(供)に分類されるが,これらは並行して行われることが多い。
→護摩
執筆者:和多 秀乗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…総じて,日々行事,月例行事のように日常性のあるものは小規模・簡略に,特殊な年中行事,臨時的な行事は大規模・盛大に執行される。
[寺事と法要]
寺事の中核となる法要は,何曲かの声明(しようみよう)と,特定の修法(しゆほう)や読経などを組み合わせて構成されている。その組合せ方によって種々の意義を表明しうるわけであり,これに礼拝や行道(ぎようどう),呪法(呪師)などの所作を加えて,より意義を鮮明にし,儀礼としてのかたちを整えている。…
※「修法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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