最新 地学事典 「生体磁石」の解説
せいたいじしゃく
生体磁石
biomagnet
生物体内で形成された磁鉄鉱などの強磁性鉱物。生物起原磁性鉱物とも。1962年にH.A.Lowenstamによりヒザラガイの歯から磁鉄鉱が最初に発見された。その後,走磁性バクテリア・ミツバチ・ハト・サケ・イルカなどの動物からも磁鉄鉱が発見されている。後者の個々の結晶はマグネトソーム(magnetosome)と呼ばれ,有機質被膜をもつことが走磁性バクテリアで確認されている。結晶の大きさ・形・組成・成長等が生体により制御されており(biologically controlled mineralization;BCM),きわめて効率のよい磁石となる単磁区サイズの大きさ(20~300nm程度),チタンを含まない純粋な磁鉄鉱の組成,六方稜柱,八面体,涙滴状等の特徴的な結晶形態および,欠陥のほとんどない結晶構造をもつ。走磁性バクテリア(magnetotactic bacterium)は鎖状に配列したマグネトソームをもち,磁力線方向に運動すると考えられている。嫌気性・微好気性・好気性の各種が知られ,多様な環境の海底・湖底堆積物や土壌から発見されている。嫌気性種ではグリグ鉱を生成するものも知られる。化石として堆積物中に残されたマグネトソームは磁石化石(magnetofossil)と呼ばれ,堆積物の残留磁化の担い手の一つとして重要。なお,鉄還元バクテリアのような,生物の代謝の結果として細胞外に強磁性鉱物が生成される過程(biologically induced mineralization;BIM)も知られている。
執筆者:赤井 純治・山崎 俊嗣
参照項目:磁区構造
出典 平凡社「最新 地学事典」最新 地学事典について 情報

