日本大百科全書(ニッポニカ) 「グリグ鉱」の意味・わかりやすい解説
グリグ鉱
ぐりぐこう
greigite
硫化鉱物の一つ。この系の鉱物は一般式AB2X4をもつ。Aには鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)などが、Bには鉄、コバルト、ニッケルのほか、クロム(Cr)、インジウム(In)、白金族元素(ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、白金(Pt))などが該当し、Xには硫黄(いおう)(S)のほかにセレン(Se)が含まれることがある。これらの存在は本系構成種の理想化学組成式に基づいており、少量成分まで考慮するとその内容はもっと多くなる。なお同一の一般式をもちグリグ鉱と同じ等軸晶系に属するものをリンネ鉱群、単斜晶系に属するものをウィルクマン鉱(wilkmanite)群とよぶことがある。
グリグ鉱は、磁鉄鉱の硫黄(いおう)置換体に相当し、同構造であるのみならず、強い磁性をもつ。その存在は古くから注目されていたが、鉱物学的記載が行われたのは1964年のことである。自形はかろうじて肉眼で観察されるものが報告されており、正八面体の粒状結晶が集合している。まれに立方体をなすものもある。
きわめて低温で沈殿した湖成堆積(たいせき)物中、ある種の低温熱水鉱脈鉱床、あるいは鉱床の酸化帯中に産する。日本では宮城県気仙沼(けせんぬま)市本吉(もとよし)町徳仙丈(とくせんじょう)鉱山(閉山)、秋田県大館(おおだて)市小坂鉱山(閉山)などから報告されている。共存鉱物は堆積岩中の場合、モンモリロン石などの粘土鉱物、方解石など、金属鉱床の場合、黄鉄鉱、白鉄鉱、方鉛鉱、閃(せん)亜鉛鉱、輝安鉱、クレル鉱、方解石、苦灰石、ドーソン石dawsonite(化学式NaAl[(OH)2|CO3])など。命名はアメリカ、ペンシルベニア州立大学のジョセフ・ウィルソン・グリグJoseph Wilson Greig(1895―1977)にちなむ。
[加藤 昭 2016年8月19日]