生物多様性条約の日本国内実施に関する包括的な法律として、議員立法によって2008年(平成20)5月に成立した法律(平成20年法律第58号)。同年6月公布・施行。環境基本法の下位法として位置付けられる基本法で、生物多様性に関する個別法に対しては上位法として枠組みを示す役割を果たす。
1992年(平成4)に採択された「生物多様性条約」や翌1993年に制定された環境基本法を踏まえ、政府は数次にわたって閣議決定による「生物多様性国家戦略」を策定したが、同戦略に対しては、法定計画ではないなどの限界も指摘されていた。生物多様性基本法の制定により、「生物多様性国家戦略」が法律に基づく戦略として位置付けられることとなった。
本法では、「生物の多様性」を「様々な生態系が存在すること並びに生物の種間及び種内に様々な差異が存在すること」と定義し、「持続可能な利用」を「現在及び将来の世代の人間が生物の多様性の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である生物の多様性が将来にわたって維持されるよう、生物その他の生物の多様性の構成要素及び生物の多様性の恵沢の長期的な減少をもたらさない方法(以下「持続可能な方法」という。)により生物の多様性の構成要素を利用すること」と定義する。そのうえで、この両者をバランスよく推進するため、生物多様性の保全および持続可能な利用について、(1)野生生物の種の保存等を図るとともに多様な自然環境を保全する、(2)国土および自然資源を持続可能な方法で利用する、(3)予防的かつ順応的取組方法により対応する、(4)長期的な観点から保全と再生に努める、(5)地球温暖化防止に資するとの認識のもとに行う、といった五つの「基本原則」を示している。なお、本法にいう「持続可能な利用」は、いわゆる環境法の目的である「持続可能な発展」の考え方を踏まえて、それを具体化したものである。
つぎに、「生物多様性戦略」として、政府に対して「生物多様性国家戦略」の策定を義務づけるとともに、地方自治体に対しても「生物多様性地域戦略」を策定する努力義務を課している。さらに第3章では、基本的施策として「地域の生物多様性の保全」、「国土及び自然資源の適切な利用等の推進」「国際的な連携と協力」などについて規定しているが、なかでも特筆されるべきは、「事業計画の立案の段階等での生物の多様性に係る環境影響評価の推進」として、いわゆる「戦略的環境アセスメント」の推進のための措置を国が講ずることを明記したことである。
なお、生態系に影響を与える行為は、自然保護関係法ではなく開発関係法のもとで規制されていることが多いが、開発関係法において環境保護的な観点が欠如していた結果、自然破壊を招いてきた。この点について、本法附則2条では、開発関係法においても環境保護的な観点を重視する方向性が明確に示されている。
[田中 謙]
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