田使(読み)でんし

改訂新版 世界大百科事典 「田使」の意味・わかりやすい解説

田使 (でんし)

〈たつかい〉とも読む。奈良時代から平安時代初期にかけて,寺院または王臣家荘園の経営にあたったものをいう。東大寺の創立後まもなく諸国寺田(荘園)が置かれると,田使がその開発と経営にあたった。当初は造東大寺司の下級官人が派遣されたが(桑原荘など),天平神護年間(765-767)になると寺僧が派遣され,荘使佃使とも呼ばれた。また《続日本紀》には,土人,浪人と並んで王臣佃使の名が見える。田使に先行するものとして,令制前の田令(たつかい)がある。なお,屯倉(みやけ)の系譜を引く官田の経営には,田司と呼ばれる宮内省の下級官人があたったが,田司も田使と同種のものとみなされていた。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「田使」の意味・わかりやすい解説

田使
でんし

古代に,中央から諸国に派遣された官人で,税帳記載水田雑物を対照し,国司非違を正すのを職掌とした。『東大寺文書』のなかに,天平宝字2 (758) 年の越前の田使の (げ。公文書) がみえている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の田使の言及

【田使】より

…奈良時代から平安時代初期にかけて,寺院または王臣家の荘園の経営にあたったものをいう。東大寺の創立後まもなく諸国に寺田(荘園)が置かれると,田使がその開発と経営にあたった。当初は造東大寺司の下級官人が派遣されたが(桑原荘など),天平神護年間(765‐767)になると寺僧が派遣され,荘使,佃使ともよばれた。…

※「田使」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android