官人(読み)カンニン

デジタル大辞泉 「官人」の意味・読み・例文・類語

かん‐にん〔クワン‐〕【官人】

官吏。役人。かんじん。
「ある国の祗承しぞうの―のにて」〈伊勢・六〇〉
律令制で、太政官・各省・寮司などの、初位以上六位以下の役人の称。
平安時代、位の低い役人。特に、近衛府将監以下の称。
検非違使けびいしの役人。

つかさ‐びと【官人】

官職にある人。官吏。役人。
「―より始めて、諸々の民に至るまで」〈東関紀行

かん‐じん〔クワン‐〕【官人】

かんにん(官人)1

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精選版 日本国語大辞典 「官人」の意味・読み・例文・類語

かん‐にんクヮン‥【官人】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 官吏。役人。
    1. [初出の実例]「于時府家備設酒食宴府官人等」(出典:万葉集(8C後)一六・三八三七・左注)
    2. 「ある国の祗承の官人の妻にてなむあるとききて」(出典:伊勢物語(10C前)六〇)
  3. 諸司の主典(さかん)以上の役人。
    1. [初出の実例]「凡官人至任。若無印文者。不受代」(出典:令義解(718)選叙)
  4. 近衛将監以下および院司の庁官などの総称。
    1. [初出の実例]「さ左の司のくん人。もののふしどもの中にも選びてなむ罷り下りて侍りし」(出典:宇津保物語(970‐999頃)吹上上)
  5. 検非違使庁の佐と尉の役人。
    1. [初出の実例]「案。式已上二条。右衛門府准此者。弘衛式云。凡撿挍右京非違者。官人一人。府生一人」(出典:政事要略(1002頃)六一)

つかさ‐びと【官人】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 官職にある人。朝廷につかえている役人。官吏。役人。つかさ。かんにん。
    1. [初出の実例]「主等・臣等・百(ももち)の官人(ツカサヒト)」(出典:延喜式(927)祝詞(九条家本訓))
  3. 宦官(かんがん)異称
    1. [初出の実例]「帝、亦、太子に枉誅(わうちうせら)れて、亦、閹の人、宗愛が為に被れぬ」(出典:今昔物語集(1120頃か)九)
    2. 「閹 ツカサ人 フクリトリヒク」(出典:観智院本名義抄(1241))

かん‐じんクヮン‥【官人】

  1. 〘 名詞 〙かんにん(官人)
    1. [初出の実例]「理に明るい許りで策に迂なるは官人(クヮンジン)通弊」(出典:閑耳目(1908)〈渋川玄耳〉均霑論と均損論)

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普及版 字通 「官人」の読み・字形・画数・意味

【官人】かん(くわん)じん

官吏。社会的身分のある男子。夫。〔子、彊国士大夫にはし、官人には秩をし、庶人には祿をす。是(ここ)を以て善を爲すめ、不善を爲すは沮(はば)まる。

字通「官」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「官人」の意味・わかりやすい解説

官人(かんじん)
かんじん

「かんにん」とも読む。律令(りつりょう)制における官吏一般を意味する用語。律令官僚機構のポスト(官)についている者の意。律令の条文における用例では、その概念内容に広狭二義があった。狭義の官人は、官位令に官位相当が定められている中央諸官庁・大宰府(だざいふ)・諸国国司などの四等官および品官(ほんかん)を意味する。これに対して広義の官人は、狭義のそれに加えて、舎人(とねり)・兵衛(ひょうえ)・伴部(はんふ)・使部(しぶ)などの雑任や、地方の郡司四等官・軍毅(ぐんき)・国博士(くにはかせ)・医師を包含し、養老(ようろう)令の職員令(しきいんりょう)(大宝(たいほう)令では官員令)に記載された諸官庁の雑任以上すべてを含む概念であるが、同令において雑任の下に置かれている直丁(じきてい)・駈使(くし)丁は、力役の一形態として農民を諸司に配置したものであり、官人のうちには含まれない。

[吉岡眞之]

『野村忠夫著『律令官人制の研究』増訂版(1970・吉川弘文館)』『野村忠夫著『官人制論』(1975・雄山閣出版)』


官人(かんにん)
かんにん

官人

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「官人」の解説

官人
かんじん

「かんにん」とも。律令制下の官吏のこと。厳密には,官位令に掲げる官職に就く人,すなわち諸司の四等官および品官(ほんかん)をさす。広義では史生(ししょう)・舎人(とねり)などの雑任(ぞうにん)や郡司なども含める。力役として差発された衛士(えじ)・仕丁(しちょう)などと異なり,勤務により,毎年の考課にもとづき位階を授けた。のちには近衛府などで将監(しょうげん)(判官)以下をとくにさす場合もあり,また国衙で実務にあたる人々を在庁官人とよぶようにもなった。

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百科事典マイペディア 「官人」の意味・わかりやすい解説

官人【かんじん】

律令制度下の官吏一般をいう用語。狭義には〈大宝令〉などの官位令に官位相当が規定された,諸司の主典(さかん)以上(4等官)および品(ほん)官をさし,広義には舎人(とねり)・兵衛(ひょうえ)・伴部(ともべ)・使部(つかいべ)などの下級官吏官も含める。

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旺文社日本史事典 三訂版 「官人」の解説

官人
かんじん

律令制下の官吏
位階によって五位以上の上級官人(殿上人 (てんじようびと) )と六位以下の下級官人に分けられた。上級官人は都で貴族層を形成し,蔭位 (おんい) や経済的特権をうけ固定化していった。下級官人はおもに地方出身者が採用された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「官人」の意味・わかりやすい解説

官人
かんにん

令制の官吏の総称。狭義には太政官,各省などに勤仕する初位以上六位以下のもの,六衛府の尉,将監以下のもの,院庁の公文,院掌などをさす。また,国司制における在庁官人や太政官に属した保官人をいうこともある。

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世界大百科事典(旧版)内の官人の言及

【所司】より

…古代,中世の官司・官人の一つ。(1)奈良・平安時代に,ある事柄を担当する官司,あるいは官人の意味で用いられた言葉。…

※「官人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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