日本大百科全書(ニッポニカ) 「操舵装置」の意味・わかりやすい解説
操舵装置
そうだそうち
steering gear
船が針路を保持したり変更する場合に、舵(かじ)を操作する装置。人力操舵装置(手動操舵装置ともいう)と動力操舵装置に大別される。
[岩井 聰]
人力操舵装置
舵を直接人の力で操作する方式のもの。短艇(端艇)や小型ヨットなどの舟艇では、舵の上端部の舵頭に取り付けたチラーtiller(舵柄)やヨークyoke(横(おう)舵柄)の向きを人力で左右に回転させ、ガジョンgudgeon(壺金(つぼがね))で支持する艇尾の舵を、ピントルpintle(舵針)を軸に回転させ操舵する。また、汽艇とか小型船舶では、舵頭に取り付けたクロスヘッドcross headやコードラントquadrantを、ロッドや歯車さらにはチェーンやワイヤを介して舵輪に連結させ、舵輪を回転操作して舵を人力で動かす操舵方式がとられている。
[岩井 聰]
動力操舵装置
舵を動かすのに動力による操舵機(舵取機ともいう)を用いる方式のものである。船が大きくなると舵も大きくなり、また船の速力が増すと舵に当たる水圧も大きくなる。そのため舵の操作には大きな力が必要で、人力では困難となる。船舶設備規程によると、長さ60メートルを超える船舶は動力操舵装置を備えることが定められている。
操船にあたっては船橋で舵輪を回転させると、舵輪の回転は操縦装置に伝えられ、これが操舵機を作動させる。そして操舵機の運動は舵角伝達装置を介して舵を回転させる。舵の回転は追従装置によって操舵機発停装置にフィードバックされ、所定舵角に達すれば舵の回転を止める。これが動力操舵装置のシステムである。操縦装置や操舵機が故障したときのために、それぞれ予備装置が備えられている。また舵輪や舵の回転角を示すための舵角指示器ももっている。
[岩井 聰]
操舵機
蒸気操舵機、電動油圧操舵機、全電動操舵機などがある。(1)蒸気操舵機 蒸気を動力とする二汽筒往復機関が用いられ、クランクの回転がウォーム歯車を経て、コードラントを回転させ操舵する。(2)電動油圧操舵機 電動機を介して操縦用レバーにより油圧ポンプを作動させ、その送油方向と送油量を制御することによってクロスヘッドを回転させ、ラダーチラーを左右に動かして操舵する。(3)全電動操舵機 操舵機室の操舵用電動機を作動して、舵頭に取り付けたコードラントにかみ合う小歯車を回転させて舵を動かすもの。電動機の回転は、減速ギヤで回転数を落として小歯車に伝達させる。また電動機の発停および回転方向の制御は、電圧の大きさと方向の制御によって行われ、直接制御方式とワードレオナード方式とがある。
操舵装置の性能については、船の種類や大きさ、その船が従事する航路に応じて、船舶設備規定により規定されている。たとえば、国際航路に従事する大型船では、片舷(げん)35度から反対舷30度まで28秒以内に操舵できるとともに、操舵装置は十分の強度をもつことなどの条件がつけられている。
[岩井 聰]