癖地(読み)クセチ

デジタル大辞泉 「癖地」の意味・読み・例文・類語

くせ‐ち【癖地】

所有したり立ち入ったりすると、不幸があると信じられている土地癖山。入らず山。

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精選版 日本国語大辞典 「癖地」の意味・読み・例文・類語

くせ‐ち【癖地】

〘名〙 忌まれる土地。神祭関係のあったものが変転し、あるいは葬地であったものが忘れられ、理由はわからないが立ち入ったり所有したりすると祟(たた)りがあるとされている土地。地名になったものもある。癖山。

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改訂新版 世界大百科事典 「癖地」の意味・わかりやすい解説

癖地 (くせち)

たたりがあるとして所有や立入りが忌まれている土地。千葉,静岡,愛知の諸県でこれを癖地というが,山や田の場合は癖山,癖田と呼ばれる。同じ性格の土地は全国各地に見られ,タタリ地ノロイ地,トシ山,バチ山,イラズ山,イワイ山,キショウ山,ヤマイ田,ケチ田ブク田ヤン畑トシ畑などの名称が知られている。こうした土地には,地蔵や荒神があった所だとか,仏像が埋まっていた,刑場があった,土地の境界争いがあった,行路死人があった所だなどという伝承が伴っていることが多い。このほか,鍛冶屋敷や寺屋敷などの屋敷跡城跡,塚跡などもしばしば忌まれている。癖地にはかつて実際に死人やけが人が出て忌まれるようになったものと,初めは古い葬地や聖地として敬遠されていた土地がしだいにその意味が忘れられて,たたるとか病気になるという伝承が後に生まれたものとがある。また癖地の中には,嫌われて買い手がないために社寺に寄付されるものもあった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「癖地」の意味・わかりやすい解説

癖地
くせち

所有者や耕作者に不幸をもたらすと信じられてきた屋敷や山林・田畑。祟(たた)り地(ち)、病田(やまいだ)、とし山、斎山(いわいやま)、罰(ばち)山、呪(のろ)い地、入(い)らず山などともよばれ、その分布も全国に及んでいる。多くは、その所有者やそこで働いた人が、かつて不測のけがを受けて死亡したとか、あるいは代々の所有主が次々に変死したとかいう伝承を伴うもので、通例そのために久しく放棄されてもいた。いわゆる「因縁づき」の土地で、変死した人の怨念(おんねん)がそこに残って種々の異変を引き起こすと信じられ、またそうした不幸が事実続発したといった伝承を伴ってもいる。三角田、三角屋敷など異形の田畑屋敷を忌む伝承もこれに関連するところであり、また古い葬地や廃寺廃社の跡地を忌むのも一般の習俗となっている。ともかく不慮の災厄で死去した者の「怨霊(おんりょう)」がその土地にとどまって、のちのちの人にその「宿怨(しゅくえん)」を及ぼすと信じられてきた。そして大火の「火元」や変死の相次いで起こった家の屋敷跡を忌み嫌って、久しく「空き地」のまま残す習俗も広くみられた。

[竹内利美]

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百科事典マイペディア 「癖地」の意味・わかりやすい解説

癖地【くせち】

所有したり立ち入ったりすると祟(たたり)があるという土地。争いや死人が出た跡とか,刑場や荒神や塚の跡という山や田。そこの木をきったり,女や馬がはいると祟があるという。罰山,病田(やみた),つまずき田とも。形の連想から位牌(いはい)山や塔婆(とうば)山も忌まれる。買手がないので,寺社に寄進される地が多い。
→関連項目禁忌(民俗)

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