刑場(読み)ケイジョウ

デジタル大辞泉 「刑場」の意味・読み・例文・類語

けい‐じょう〔‐ヂヤウ〕【刑場】

死刑を執行する場所。

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共同通信ニュース用語解説 「刑場」の解説

刑場

絞首刑を執行する施設。札幌仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の計7カ所にある。このうち東京拘置所の刑場は2010年、死刑囚が立つ踏み板と縄を掛ける滑車がある「執行室」のほか、踏み板を開ける三つのボタンが並ぶ「ボタン室」、検察官や拘置所長らが見守る「立会室」などが公開された。刑場の形式や執行手順の規定は1873年の太政官布告「絞罪器械図式」までさかのぼり、現在も有効とされるが、現在の刑場と内容が異なる部分も多いとされ、新たな法整備を求める声がある。

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精選版 日本国語大辞典 「刑場」の意味・読み・例文・類語

けい‐じょう‥ヂャウ【刑場】

  1. 〘 名詞 〙 罪人の死刑を執行する場所。仕置場(しおきば)
    1. [初出の実例]「那の輩大胆、刑場に向て猶を這等衣食を為す」(出典:江戸繁昌記(1832‐36)五)

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改訂新版 世界大百科事典 「刑場」の意味・わかりやすい解説

刑場 (けいじょう)

一般には公権力によって設置された死刑執行の場をいう。

江戸時代には,御仕置場(おしおきば)ともいわれた。通常,死刑執行の場に限定し,敲(たたき)刑を行った牢屋敷門前や,晒(さらし)刑執行の晒場は含めない。死刑は,牢屋敷内で行うものと,牢屋敷の外で行うものとがあったが,狭い意味で刑場という場合,牢屋敷外の刑執行場を指している。江戸小伝馬町牢屋には,南東隅に切場(きりば)があって,死罪,下手人および獄門の諸刑は,ここで斬首がなされた。公開処刑ではなく,検使,牢屋見廻,囚獄石出帯刀(いしでたてわき)ら関係者が立ち会う。かたわらの御様場(おためしば)においては,死罪人の死体を用い様斬(ためしぎり)を行った。なお武士の閏刑(じゆんけい)である切腹の場所は,牢屋敷内揚座敷(あがりざしき)前庭のほか,時宜によって当人預け先の屋敷内があてられた。牢屋外の刑場として,江戸では千住小塚原(こづかつぱら)と品川鈴ヶ森に常設のものがあり,これを〈両御仕置場〉と称した。徳川家康の関東入国以前には日本橋本町4丁目に刑場があったといい,小塚原刑場は浅草鳥越から聖天町を経て千住の地に落ち着いたもの,鈴ヶ森刑場は1651年(慶安4)丸橋忠弥らの処刑に始まると伝えられている。両刑場では磔(はりつけ)および火罪の刑を執行し,獄門刑については牢内ではねた首を運んで獄門台上に梟示(きようじ)(梟首,さらし首)した。出生地,住居地,犯行地に近い刑場が選ばれたが,幕末には小塚原を使用することが多かった。小塚原では武士の閏刑である斬罪も行われている。両刑場はそれぞれ奥州・日光道中や東海道に臨む。処刑と処刑後の死体が往来の人々の目にさらされ,刑罰の峻烈さは民衆を威嚇した。人家から隔たり草木生い茂る刑場には,取り捨てられた死骸に野犬が群がって,その光景は荒涼凄愴をきわめたという。

 京都においては粟田口(あわたぐち)と西土手(にしのどて)に〈東西御仕置之場所〉が置かれ,大坂は千日,野江,鳶田(とびた)などの刑場を有した。このほか幕府直轄地では,長崎の西坂,横浜の暗闇坂(くらやみざか)の刑場が外国人にも知られていた。在方でも先例ある地,牢屋近所,村末などを処刑の場にした。諸藩の刑場としては,たとえば仙台藩の七北田(ななきた),水戸藩の田彦原,後台(ごだい)入合野,長岡原,台渡(だいわたり)走付,加賀藩の尾坂門内,尾張藩の土器野(かわらけの),彦根藩の西沼波(にしのなみ),岡山藩の柳原,万成などがある。近代にはいって1870年(明治3)の新律綱領は,死刑に絞,斬,梟示および士族の閏刑である自裁の4種を規定した。72年の監獄則によれば,刑場は監獄の一隅に設けられた。翌年自裁が,79年には梟示も廃止されて,死刑は監獄内で完結するものとなった。82年施行の刑法(旧刑法)は,死刑を監獄内で行う絞首と定め,同時施行の刑法付則および前年の監獄則は,監獄内の一隅に設けた死刑場で密行するものとしている。現行法(刑法,刑事訴訟法,監獄法)の規定もこれと変わるところはない。
執筆者:

春秋時代,列国の都の市場は多くの人が集まる交易の中心であったが,同時に死刑を棄市(きし)と称したように,公開処刑の執行の場でもあった。焚(ふん)(火あぶり),磔(たく)(はりつけ),車裂(または轘(かん)),梟首などの極刑が古く行われた。漢代,外国使節が滞在する宿舎(蛮夷邸)のあった長安の南門内の藁街(こうがい)は刑場として有名であり,唐代洛陽の洛水にかかる天津橋も橋柱に縛りつけて処刑したところである。受刑者の罵声を妨げるために,木製の玉を口中に押し入れることも唐代以後行われたという。梟首は通常3日にわたった。

 隋の煬帝(ようだい)は3日がかりで処刑を行ったと伝えられるが,五代・宋以後行われた凌遅(りようち)は,刑場に立てられた柱に死刑囚を縛りつけ,生きながら徐々に肢体を切りとる刑である(凌遅処死)。明代,宦官劉瑾(りゆうきん)の凌遅の場合には,3日がかりで4700刀を加えられたという。清代には,加えられる刀の数によって24刀,36刀,72刀,120刀の区別があった。凌遅と梟示(梟首)は清末,1905年(光緒31)に正式に廃止された。清代,北京では繁華街の菜市口(さいしこう)が刑場であった。執行期日前に告示して民衆に知らせ,絞は絞手,斬は劊子手(かいししゆ)が,監決官の指揮監督のもとに刑をほどこした。魯迅の《薬》に描かれているように,民衆の間には,饅頭(マントウ)に死刑者の血をつけて食べると病気よけになるという迷信があった。死刑は民衆に公開するのが原則であった。しかし春秋時代に内廷たる朝(ちよう)で貴族を処刑したように,高官の処刑の場合には宮廷内で行い,また自殺させることもあった。
執筆者:

刑場の位置やあり方は処刑に関する観念の違いによって異なっており,ひとつの社会における人と人の関係が共同生活を軸として営まれていくとすれば,そのなかで一方の極にある処刑の社会的位置が刑場によって明示されている。タキトゥスの《ゲルマニア》によると,死刑,投獄,笞刑なども司祭によって執行され,聖なる手によってなされ,公開されていた。また中世においても共同体が判決を発見するのだから,処刑も共同体がみずからの手で行うべきだという考え方が一般的であり,住民全員が絞首綱を引いた例もある。中世都市が成立して以後は市の中心部にある市場広場Marktplatzが処刑場となり,公開で処刑が行われた。のちになって市壁の外に処刑場が設置されたが,死体はつるしたままで放置されていた。近代になると町の外に石垣を2mほど積み上げた処刑場がつくられ,そこで一度に10名以上の者の絞首刑が執行しうるようになっていた。

 しかし13,14世紀以後,処刑はかつての神聖な行為としての性格を失い,忌むべき行為とされ,職業として処刑を行う刑吏が登場する。ほぼ同時に刑吏は賤民化していくが,処刑に必要な道具である絞首台をつくる大工なども賤視の対象になりかねなかった。そこで市参事会は処刑台祭を開き,町民総出で処刑台を建設する行事を行わねばならなかった。処刑場は中世都市が裁判権をもつ自治都市であるしるしであったから,市民は処刑場を誇りとしていたのである。パリのグレーブ広場に代表されるように近代初頭にいたるまで処刑は公開であり,子どもも観客として参列していた。しかし近代に入ると処刑は屋内で行われるようになり,非公開とされ,刑場も刑務所の一室におかれるようになった。公開の刑場から非公開の屋内処刑場への変化は,人が人を裁き殺すという人間関係の一方の極における大きな変化を示しており,近代社会と中世社会の大きな違いをあらわしてもいる。
執筆者:

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普及版 字通 「刑場」の読み・字形・画数・意味

【刑場】けいじよう

処刑場。

字通「刑」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の刑場の言及

【小塚原】より

…東京都荒川区にあった地名で,〈こつかっぱら〉ともいい,古塚原(こづかはら),骨ヶ原(こつがはら)ともいう。江戸時代,本所回向院の持地に幕府の刑場が置かれたことで名高い。刑場は現在の南千住2丁目,浅草山谷から奥州・日光道中最初の宿場千住へ向かう西沿いにあって,間口60間余,奥行30間余の規模を有した。…

【牢屋】より

…なお牢屋では懲役刑は行われることがなく,したがって牢屋には懲役監としての性格はなかった。(3)死刑,入墨刑が牢屋の構内で執行されたので,牢屋には刑場としての機能も加わっていた。 江戸幕府の牢屋には,関東郡代支配の本所牢屋,京都・大坂・長崎などの奉行所の牢屋,各代官所の牢屋などがあるが,最も大きく,著名なのは江戸の小伝馬町牢屋である。…

※「刑場」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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