地層中に埋もれた過去の植物の花粉pollenおよび胞子sporeをとり出し,それらを識別・鑑定するとともに,そのおのおのの量的な分布を調べるまでの一連の操作をいう。その結果は,地質学,古生物学,考古学,林学などに利用される。とくに地質学や考古学の分野では,過去の気候や植生を知るための資料として重要視される。また特定の花粉や胞子は,ある特定の地質時代にしか発見されないことを利用して,これらの花粉や胞子を含む地層の地質時代を知るために利用される。
試料の種類,年代,固結の程度によって,花粉・胞子をとり出す方法はさまざまであるが,一般に試料の粉砕,ふるいわけ,化学的処理,プレパラートの作製の順序となる。試料は30~60メッシュの粒度に砕き,化学処理は水酸化カリウムと酢酸(泥炭などの場合),水酸化カリウムと過酸化水素(褐炭などの場合),硝酸と塩素酸カリウム(石炭などの場合)を用いて試料中の可溶性物質は除く。固結した岩石の場合は,フッ化水素水により岩石(ケイ質部分)を溶解する。残渣(ざんさ)は遠心分離器によって濃縮し,これをプレパラートに封入して,高倍率の顕微鏡で鏡検,種類を鑑定する。近年では花粉・胞子の識別・鑑定をより正確に行うこと,またとくに花粉の表層の状態からその機能を知るなどの目的から,走査型電子顕微鏡による観察が行われている。また花粉分析と同じ方法で,従来はあまり手をつけられることのなかった花粉・胞子以外の微化石の分析も進められるようになっている。最近では30億年以上も昔の地層から,バクテリアや藻類の化石が発見されている。花粉・胞子を含む地層が,後に激しく褶曲をしたり,火成岩の貫入による熱の影響を受けたりすると,これらの花粉・胞子は一般に消失する。
執筆者:木村 達明
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地質学的に古い地層の堆積(たいせき)物に含まれている花粉を調べる方法。花粉の外壁は分解されにくいタンパク質や脂肪などの物質からなるうえに、湿原の泥炭地、池底の堆積物など分解条件の悪い所ではさらに分解されにくくなるので、他の生物遺骸(いがい)が分解されたのちも、花粉はそのまま保存されることが多い。花粉の形態は、種や属によってそれぞれの特徴を示すので、異なる深さの地層から検出される花粉を調べることによって、当時の植生、森林の状態、気候などを推定できる。しかし、マツなどの場合には、植物の種類によって花粉の生産量、散布範囲などに差があるため、採集した花粉の分布を判断するためには、植物の基礎知識を必要とする。
花粉分析は、ポストL. von Postらにより考案され(1916)、北ヨーロッパの泥炭層での植物や気候の変遷が調査された。この結果が他の分野からの結果とよく一致したことから、広く世界的に利用されるようになった。日本でも1923年(大正12)以来、第四紀の堆積層の調査はこの方法により行われている。今日では花粉分析の結果は燃料資源の開発、海底地質の解明などにも広く役だっている。
[杉山明子]
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…胞子壁をつくるスポロポレニンは,化学的にきわめて安定した物質であるので,胞子は化石として残りやすい。そのため,埋土した胞子を調査研究する花粉分析は,陸上植物の起源,系統進化などを解明する上で有効な方法である。それによって,最初の陸上植物の胞子は同形胞子,三稜形で単純な表面模様であったこと,コケ植物やシダ植物あるいはその片方が,その大型化石が発見されていない古生代の中部シルル紀(4億1500万年前)にはすでに存在していたこと,中部デボン紀にはすでに異形胞子に分化していたことなどがわかっている。…
※「花粉分析」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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