六調子(読み)ロクチョウシ

デジタル大辞泉 「六調子」の意味・読み・例文・類語

ろく‐ちょうし〔‐テウシ〕【六調子】

雅楽の唐楽に用いる六つの旋法名。太食たいしき調壱越いちこつ調平調ひょうじょう双調そうじょう黄鐘おうしき調盤渉ばんしき調

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精選版 日本国語大辞典 「六調子」の意味・読み・例文・類語

ろく‐ちょうし‥テウシ【六調子】

  1. 〘 名詞 〙 雅楽で壱越(いちこつ)調・平(ひょう)調・双調・黄鐘(おうしき)調・盤渉(ばんしき)調・太食(たいしき)調をいう。「りくちょうし」ともいう。
    1. [初出の実例]「六てうしといふことあり。いはゆる大食調をくはへたる也」(出典:龍鳴抄(1133)上)

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改訂新版 世界大百科事典 「六調子」の意味・わかりやすい解説

六調子 (ろくちょうし)

日本音楽の理論用語。現在の雅楽の唐楽で用いられている6種の調子をいう。唐楽六調子ともいい,〈りくちょうし〉と読む立場もある。6種とは,壱越(いちこつ)調(壱越が宮(きゆう)(五音ごいん)の主音)。(りよ)),平調(ひようぢよう)(平調が宮。),双調(そうぢよう)(双調が宮。呂),黄鐘(おうしき)調(黄鐘が宮。律),盤渉(ばんしき)調(盤渉が宮。律),太食(たいしき)調大食調とも。平調が宮。呂)で,打ち物のみで奏される乱序(らんじよ)を除いて,すべての唐楽曲は,六調子のいずれかに属する。六調子は五行説と結びついて,四季に配されたり,葬儀に用いられたりする。

(1)壱越調 選定曲(1876年と88年に宮内庁雅楽局によって制定された曲目)となった舞楽がもっとも多く,かつ変化に富んでいる。非当曲(当曲として扱われる曲以外の曲)として,調子,音取(ねとり)のほかに乱声(らんじよう)の類を有するのも特徴となっている。枝調子に沙陀(さだ)調がある。宮の壱越が十二律の基準であるところから,壱越調も六調子の第1にあげられ,季節の配当は土用で,四季通用とされる。

(2)平調 管楽器の手ほどきや,鑑賞入門の教材にされる曲が多く,その意味でなじみ深い調子である。律の催馬楽(さいばら)は平調として扱われる。秋の調子とされる。

(3)双調 舞楽がもっとも少なく,管絃の演奏においては,ほかの調子からの渡物(わたしもの)を多く用いる。低い音域を比較的多用し,篳篥(ひちりき)の塩梅(えんばい)(指遣いを変えずに音高をなめらかに変化させる技法)の技巧が少ないため,全体に素朴な印象を与える。呂の催馬楽は,双調として扱われる。春の調子とされる。

(4)黄鐘調 やはり舞楽が多くなく,かつ,旋り(めぐり)(旋律の動き方)の独自性がもっとも稀薄な調子である。枝調子に水(すい)調がある。夏の調子とされるが《喜春楽》などの曲名がある。

(5)盤渉調 都節(みやこぶし)音階化した主旋律が,日本人にもっとも親しみやすく感じられる調子で,篳篥の塩梅の技巧の駆使が目立つ調子でもある。冬の調子とされるが《秋風楽》《千秋(せんしゆう)楽》《万秋楽》など,曲名には秋のつくものが多い。葬儀の際は盤渉調が用いられる。上記の5種の拍子は,呂2種,律3種なので,呂も3種とするために加えられたのが太食調である。

(6)太食調 宮が平調と同音高であるうえに,箏の調弦に呂と律の両方があり,後者は平調とまったく同じである。太食調の舞楽は,一曲一曲がきわめて独自の趣を有している。6番目の調子として加えられたものであるから,五行説とは無縁で,特定の季節に配されることもない。
調子
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「六調子」の意味・わかりやすい解説

六調子
ろくちょうし

雅楽の唐楽で用いられる6種類の調子。「りくちょうし」とも。各調子は音階の種類や主要音の音高によって、壱越調(いちこつちょう)、平調(ひょうぢょう)、太食調(たいしきちょう)、双調(そうぢょう)、黄鐘調(おうしきちょう)、盤渉調(ばんしきちょう)という名称がつけられており、このうち壱越調、双調、太食調の3調子は呂旋(りょせん)、また平調、黄鐘調、盤渉調の3調子は律旋(りっせん)に属する。太食調以外は、その音階の主要音の音名がそのまま調子の名称になっているが、太食調は平調(ホ音)を主要音とする呂旋である。古くは六つの調子以外に、それぞれの調子の「枝調子(えだぢょうし)」として沙陀調(さだちょう)、壱越性調(せいちょう)、性調、乞食調(こつじきちょう)、水調、道調などがあったが、これらは同じ主要音をもつ六調子のなかのいずれかの調子に組み入れられ、現在は沙陀調が音取(ねとり)として、また水調が箏(こと)と琵琶(びわ)の調弦として痕跡(こんせき)をとどめているにすぎない。一方、高麗楽(こまがく)では唐楽の調名を踏襲して、高麗壱越調高麗平調高麗双調の三つの調子が用いられており、これを「高麗三調子」とよんでいる。

[千葉潤之介]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「六調子」の意味・わかりやすい解説

六調子
ろくちょうし

日本の雅楽の音楽理論用語。「りくちょうし」ともいう。唐楽の6種の「調子」の総称。すなわち壱越 (いちこつ) 調,平調 (ひょうぢょう) ,双調 (そうぢょう) ,黄鐘 (おうしき) 調,盤渉 (ばんしき) 調,太食 (たいしき) 調の6種。沙陀 (さだ) 調,道調,水調,乞食調などという調子も,旋法の違いなどから意識されていたらしいが,六調子のいずれかに吸収され,今日ではそれらを枝調子と称する。雅楽の「調子」は,本来,各楽器ごとの調律法または旋律法であって,楽器ごとにさまざまな名称の調子名があり,同一名称でも楽器によって異なる内容の場合があったが,現在では,以上の六調子に統一整理された結果,洋楽の「調性」にほぼ一致する。各調子は音高の定まった音階音を有し,理論的には呂旋の壱越調,太食調,双調と律旋の平調,黄鐘調,盤渉調に大別される。また旋律の面からは双調,壱越調,黄鐘調と平調,盤渉調,太食調の2つのグループに分けることもできる。唐楽のほとんどすべての曲はこれら6種の調子のいずれかに基づいている。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「六調子」の解説

ろくちょうし【六調子】

熊本の米焼酎。酒名は、民謡「球磨の六調子」にちなみ命名。常圧蒸留で造った原酒を貯蔵熟成させる。原料は米、米麹。アルコール度数25%、35%。蔵元の「六調子酒造」は大正12年(1923)創業。所在地は球磨郡錦町大字西。

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デジタル大辞泉プラス 「六調子」の解説

六調子

熊本県、六調子酒造株式会社が製造する米焼酎。7年、11年の長期熟成タイプもある。

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世界大百科事典(旧版)内の六調子の言及

【六調子】より

…現在の雅楽の唐楽で用いられている6種の調子をいう。唐楽六調子ともいい,〈りくちょうし〉と読む立場もある。6種とは,壱越(いちこつ)調(壱越が宮(きゆう)(五音(ごいん)の主音)。…

【雅楽】より


[音階と調子]
 平安時代以来の説によると,音階には宮・商・角・徴(ち)・羽の〈五声〉(五音(ごいん))を洋楽音階名のド・レ・ファ・ソ・ラに配する〈律(りつ)〉と,ド・レ・ミ・ソ・ラに配する〈呂(りよ)〉との2種があり,さらに宮音の位置によりそれぞれが3種の調をもつとされ,壱越調(いちこつちよう)(壱越),平調(ひようぢよう),双調(そうぢよう),黄鐘調(おうしきちよう)(黄鐘),盤渉調(ばんしきちよう)(盤渉),太食調(たいしきちよう)のつごう6種類の調が規定される(律呂)。これを唐楽六調子またはたんに六調子という(表2)。このうち平調と太食調とはともに平調音(ホ音)を宮(主音)とするが,律・呂の違いにより別調とされる。…

【調】より

… 日本の雅楽は唐代中国の俗楽に基づくもので,日本にも二十八調の理論が伝わった。現行の六調子(壱越(いちこつ)調,双調,太食(たいしき)調,平(ひよう)調,黄鐘(おうしき)調,盤渉(ばんしき)調)は表の同名調と等しい。六調子のほかの枝調子(沙陀(さだ)調,乞食(こつしき)調,水調,性調,道調など)も古くは用いられ,それらもほとんどは唐代俗楽二十八調に含まれる。…

【調子】より

…唐楽は壱越調(壱越が宮(きゆう)。宮とは〈五音(ごいん)〉の主音をいう),平調(ひようぢよう)(平調が宮),双調(そうぢよう)(双調が宮),黄鐘調(おうしきちよう)(黄鐘が宮),盤渉調(ばんしきちよう)(盤渉が宮),太食調(たいしきちよう)(平調が宮)の6種で,六調子または唐楽六調子という。呂・律については,壱越調,双調,太食調の三つが呂,平調,黄鐘調,盤渉調の三つが律とされているが,管楽器が奏する主旋律に関するかぎり,いずれも理論どおりの音程関係にはなっていない。…

【唐楽】より


[調子・拍子]
 唐楽の音楽理論としては,旋律の旋(めぐ)りの中心となる音を体系化した〈調子〉の概念と,打楽器のリズム法を規定する〈拍子〉の概念がある。唐楽には6種類の調子(〈六調子〉)があり,それぞれ壱越(いちこつ)調(主音壱越),平調(ひようぢよう)(主音平調),双調(そうぢよう)(主音双調),黄鐘(おうしき)調(主音黄鐘),盤渉(ばんしき)調(主音盤渉),太食(たいしき)調(主音は平調で平調とは旋律の旋りが異なる)という。このほかかつては枝調子(えだちようし)という旋律法による区分も存在した。…

※「六調子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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