中国や日本の音楽用語。呂律(りよりつ)ともいう。本来の字義は,陽陰,天地,甲乙のように,なんらかの集合を二つに分けた場合の名称で,律が標準的なもの,呂がそれに対するものという用い方もあるが,律,呂それぞれに特定の概念があるわけではない。中国では古来音律の意味で律呂の字を用いる(蔡元定《律呂新書》など)。この音律は楽律ともいい,音組織上の音高に関する規定をもさす。〈十二律呂〉という場合は,十二律を六つずつに分けたものをいい,奇数番目の6音律を律,偶数番目の6音律を呂という。その両者を合わせたものを〈六律六呂〉ともいう。日本でも音律の意味で律呂を用いることが多いが,何かを2分類するときの対語としても使われ,例えば催馬楽(さいばら)は律歌,呂歌に分類されている。調名の分類に律,呂を用いた例では,狛近真(こまのちかざね)の《教訓抄》(1233)で,壱越(いちこつ)調,乞食(こつじき)調,双(そう)調,水(すい)調,大食(たいしき)調,沙陀(さだ)調を呂,壱越性調,平(ひよう)調,性(せい)調,道(どう)調,黄鐘(おうしき)調,盤渉(ばんしき)調を律と区分しており,大神基政(おおがのもとまさ)の《竜鳴抄》(1133)では,いわゆる六調子を律呂に分類している。その後,律呂は旋法あるいは音階上の用語としても用いられるようになり,明治にいたっては洋楽の旋法の概念を導入して命名された〈律旋〉〈呂旋〉の2分類も行われた。声明(しようみよう)の音階論において,呂曲,中曲,律曲の区別がたてられたが,その規定するところは宗派により異同があって一定していない。いずれにせよ律,呂の区分はかなり便宜的に行われた場合が多く,時代によってその規定する内容も異なっていた。
→十二律
執筆者:三谷 陽子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中国および日本の音楽用語で「呂律(りょりつ)」ともいう。
(1)音律の意味。十二律の奇数番目の六つの音律を律、偶数番目の六つの音律を呂といい(六律六呂)、その両者をあわせて「十二律呂」とよぶ。律呂はその略称で「楽律」ともいう。
(2)旋法または音階を2分類するための用語。この分類の仕方は便宜的なもので、時代によって内容の規定は異なる。現在では壱越調(いちこつちょう)、双調(そうぢょう)、太食調(たいしきちょう)の3調子が呂旋(りょせん)、また平調(ひょうぢょう)、黄鐘調(おうしきちょう)、盤渉調(ばんしきちょう)の3調子が律旋(りっせん)に分類されている。この場合、十二律の個々の音を2分類する律呂とは意味が異なり、たとえば壱越調は呂旋に属するが、壱越の音は律ということになる。
[千葉潤之介]
字通「律」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
※「律呂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新