家庭医学館 「直腸ポリープ」の解説
ちょくちょうぽりーぷ【直腸ポリープ Rectal Polyp】
ポリープとは、粘膜(ねんまく)がある場所で隆起(りゅうき)した(こぶ状に盛り上がった)病変の総称です。直腸にできた隆起を直腸ポリープといいます。
ポリープとは形態を指す呼び方で、ふつうは良性のものだけをいい、悪性のがんや肉腫(にくしゅ)は含みません。ポリープを分類する場合、一般にがんになる危険があるものとないもの、すなわち腫瘍性(しゅようせい)と非腫瘍性(ひしゅようせい)に分けます。直腸ポリープのうち、もっとも多いのは腫瘍性の腺腫(せんしゅ)と呼ばれるものです。
腺腫はがん化しやすく、ポリープの大きさが1cm以下の場合のがん化率は十数%以下ですが、2cm以上になると50%以上となります。なかでも、表面がカリフラワー状の絨毛腺腫(じゅうもうせんしゅ)はがん化傾向が強く、1cm以下でも10%、2cm以上になると60%以上のがん化率です。
直腸の非腫瘍性ポリープには、若年性(じゃくねんせい)および化生性(かせいせい)ポリープがあります。若年性ポリープは2~3歳から学童期までの子どもにみられるもので、しばしば排便時に肛門(こうもん)から脱出します。また、血便(けつべん)の原因にもなります。
化生性ポリープは高齢者によくみられる直腸粘膜の過形成(かけいせい)ですが、がん化傾向はありません。
[症状]
ポリープが小さいときにはほとんど症状はありませんが、茎(けい)があるポリープやサイズの大きいポリープがあると、残便感(ざんべんかん)や異物感、排便時の違和感があることがあります。
また、がん化すると少量の出血がおこり、便に血がまじりますが肉眼ではわかりません。進行すると、検便の便潜血検査(べんせんけつけんさ)が陽性を示して発見されます。
[検査と診断]
便潜血検査の陽性率は低いため、指で直腸を触診(しょくしん)する検査(直腸指診法(ちょくちょうししんほう))、X線注腸造影検査(ちゅうちょうぞうえいけんさ)、大腸内視鏡検査(だいちょうないしきょうけんさ)などで検査されます。直腸は肛門のすぐ上部にあるため、簡単な準備で楽に内視鏡検査ができるので、直腸ポリープの発見には現在、内視鏡検査がいちばん便利です。
[治療]
ポリープが小さかったり、大きくても茎があるものでは、内視鏡を使ってポリープの根元にスネアと呼ばれるワイヤーをかけ、これに高周波電流を流して焼き切る方法(内視鏡下ポリープ切除術)があります。
ポリープの一部ががん化している場合でもこの方法で根治しますが、がんが切除した部分の断端に残っていたり、進行の早い種類のがんの場合は、直腸ごと切除する必要があります。
絨毛腺腫や根元が広いポリープの場合は、内視鏡で切除しようとすると直腸に孔(あな)があく(穿孔(せんこう))危険があるため、肛門からとどく範囲は肛門側から切除をしますが、とどかないところは開腹して直腸を切除します。
最近は技術の進歩によって、腹腔鏡(ふくくうきょう)を利用して切除ができるようになり、手術侵襲(しゅじゅつしんしゅう)(手術によるからだへの負担)が軽くてすむようになりました。これは、おなかの中にカメラを挿入し、モニターを見ながら手術を行なう方法で、これからますます発達するでしょう。