保険の加入を希望する者によって直接的に構成される団体が保険者となって、構成員相互のために行う保険をいう。営利を目的として行われる営利保険に対する概念。相互保険には、会社組織(相互会社)によって行われるものと、組合組織(相互組合)によって行われるものとがあるが、日本の保険業法では、会社組織のもののみに営業が認められている(ただし、船主相互保険組合法などのような特別法に基づいて設立される相互組合は認められている)。
営利保険が会社法に基づく株式会社によって営業されるのに対し、相互保険は保険業法に基づいて設立される相互会社の形態をとる。相互会社の設立には10億円を下回らない基金が必要であり(保険業法6条)、相互保険事業を営むには内閣総理大臣の免許を受けなければならない(同法3条)。相互会社は法人であるが(同法18条)、その法的性質は、営利法人でも公益法人でもなく、一種特別な社団法人あるいは中間法人に属する、とされている。相互保険では、保険契約者は同時に保険者である相互会社の構成員つまり社員になる。相互会社の社員は、会社に剰余金が生じた場合にはその配当を受ける権利をもつ(同法55条)とともに、会社の債務については、払い込む保険料を限度として有限責任を負う(同法31条)。また、会社の運営も、原則的には、保険契約者である社員が集まって開く社員総会で決める仕組みになっている(同法37条以下)。
株式会社による営利保険と相互会社による相互保険は、(1)会社設立時の出資関係、(2)構成員、(3)意思決定機関、(4)事業上の損益の帰属主体などの法形式においては、本質的な相違を示している。しかし、実際には、株式会社による営利保険も相互会社による相互保険も、その保険技術、経営実態にはほとんど違いはなくなってきている。なお、相互会社という会社形態は、保険事業においてだけ存在するものである点に注意することが必要である。それは、社会性・公共性・相互性という保険がもつ特殊な性格に起因する保険事業に特有な経営形態であり、とくに相互性を強調しやすい生命保険事業においてとられる場合が多い。
[金子卓治・坂口光男]
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…相互会社の設立は商法上の会社と同様に準則主義によるが,原始社員数は100人以上(保険業法24条),基金(会社の資本金に相当する借入金)は10億円以上でなければならず(同法6条,同施行令2条),かつ事業を開始するには大蔵大臣の免許を受けなければならない(同3条)。相互会社の営む事業は保険契約(相互保険)の引受けであって,その内容は原則として株式会社の引き受ける保険契約(営利保険)と同じである(商法664条,683条)。ただし,相互会社が行う保険事業の対象は自社の社員(株式会社における株主と同じ地位)に限られるから,保険の加入者は,保険契約と同時にその会社への入社契約をも締結しなければならない。…
※「相互保険」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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