破子(籠) (わりご)
食物を入れて持ち運ぶ容器。《和名抄》によると餉笥(かれいけ),つまり食物を入れる曲物(まげもの)の器で,内部に仕切りのあるものとされている。おおむねヒノキの薄板で造り,ふたつきのものだったようである。《宇津保物語》に〈檜破子(ひわりご)五十,ただの破子五十荷〉とあるように,ふつうの破子のほかに檜破子と呼ぶものがあった。破子そのものがヒノキを材料としたことを考えると,この両者がどう違っていたのか理解しにくいが,《賀陽院水閣歌合(かやのいんすいかくうたあわせ)》(1035)には,その際に用いられた檜破子が,紫檀(したん)の地に螺鈿(らでん)を施した足をつけてあったと注記している。破子は,屋外での宴遊などに多く用いられたが,携帯用の弁当箱としても用いられ,〈昼破子(ひるわりご)を食う〉というように昼食の弁当の意味でも用いられている。現在各地でヒノキなどの薄板を曲げ,サクラの樹皮でとめたものを〈メンパ〉〈ワッパ〉などと呼んで弁当箱にしているが,これらは破子の変化したものであろう。
執筆者:鈴木 晋一
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破子
わりご
弁当容器の一種。破籠とも書く。古く食物を入れて携行した容器で、いまの折り箱のようにヒノキの薄い白木を折って、円形、三角形、四角形、扇形などさまざまな形につくり、内部をいくつかに仕切り、かぶせ蓋(ぶた)にした粗製のもので、その日限りに使い捨てたという。後世は、弁当容器としてメンツウ、メンパ、ワッパなどとよばれるヒノキの曲物(まげもの)をサクラの樹皮で留めたものや、メシゴウリなどとよばれるタケ、ヤナギの行李(こうり)が用いられ、これらを両手に持って開いたとき、蓋と身(み)がほぼ同形で二つに破(わ)った格好になるので、これを破子ともよんでいる。
[宮本瑞夫]
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破子【わりご】
破籠とも書く。食物を入れて携行する容器。ヒノキの白木の薄板を折り,円形,四角,扇形などにつくり,中に仕切をつけ蓋をする。平安時代におもに公家の携行食器として始まったが,次第に一般的になり,曲物(まげもの)による〈わっぱ〉や〈めんぱ〉などの弁当箱に発展した。
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破子
わりご
破籠とも書く。弁当箱の一種。ヒノキなどの白木を折り箱のようにつくり,中に仕切りをつけ,飯とおかずを盛って,ほぼ同じ形のふたをして携行した。古くは携行食には餉 (かれいい) ,すなわち干した飯を用い,その容器を餉器 (かれいけ) といったが,『和漢三才図会』には「わり子は和名加礼比計 (かれいけ) ,今は破子という」とある。
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わりご【破子/破籠】
檜(ひのき)などの薄板を曲げて、四角、扇形、円形などさまざまな形に作り、かぶせぶたをした、中に仕切りのある容器。弁当箱に用いた。
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世界大百科事典(旧版)内の破子の言及
【弁当】より
…行器は円筒形の塗物で数人分のものを収容し,ふたと外へ反った3本の脚をつけたもので,外居とも書いた。個人用の弁当箱は,破子(破籠)(わりご)や[曲物](まげもの)の面桶(めんつう)などから変化したもので,行器などが下僕に運ばせるものであったのに対し,みずから携帯するようになり,〈独弁(どくべん)〉と呼ばれた。西鶴の《武道伝来記》巻七の〈新田原藤太〉には,〈此二人は行灯の光りを受て独弁をひらき,小者に煎茶(せんじちや)などはこばせて〉といった文を見ることができる。…
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