脊椎(せきつい)動物、軟体動物、節足動物の発達したカメラ眼のレンズをいう。水晶体は、脊椎動物では発生時に眼杯の誘導によって表皮から形成され、その前面に薄い単層扁平(へんぺい)上皮があり、その後方には水晶体線維とよばれるきわめて細長い細胞が光の進行方向に平行に規則正しく配列する。水晶体の主要成分はクリスタリンとよばれるタンパク質で、哺乳(ほにゅう)類ではアルファ、ベータ、ガンマという3種類のクリスタリンがあり、鳥類や爬虫(はちゅう)類ではベータのかわりにデルタクリスタリンが存在する。網膜上に正確な像を結ぶには水晶体の曲率または位置を変えることが必要であるが、哺乳類、鳥類、爬虫類では毛様体筋の収縮によって曲率が変わり、両生類では前方へ、魚類では後方に牽引(けんいん)する筋肉によって位置が変化する。両生類では水晶体を除去すると虹彩(こうさい)の色素上皮の一部から水晶体が再生され(ウォルフの再生)、このことは細胞の分化転換の研究によく利用されている。
無脊椎動物では、頭足類の目や昆虫の複眼などのレンズはいずれも表皮や眼胞からのクチクラ性またはキチン性の分泌物で、非細胞性のものである。
[八杉貞雄]
眼球の中にあってレンズの働きをしている透明な組織で、目の焦点あわせは水晶体が厚さを変えることにより行われている。遠方を見るときは薄くなり、近くにピントをあわせるときには厚くなる。この働きは調節作用とよばれ、実際には水晶体前面の曲率の変化により行われる。水晶体は水晶体嚢(のう)に覆われていて、嚢の前面のすぐ下に水晶体上皮細胞が一列に並び、この細胞から水晶体線維が絶えずつくられている。古い線維はレンズの中央に押しやられて固い核となる。核と嚢の間を満たしている部分は皮質とよばれる。年齢とともに水晶体は黄色みを帯びてくるが、さらに病的に混濁したものを白内障という。
[松井瑞夫]
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…第1の光学的な視覚情報から,電気的な視覚信号への変換が目の網膜で行われ,第2の視覚信号の解読が大脳で行われるのである。
[視覚の情報処理]
外界の映像は目のレンズ(水晶体)を通して,網膜に投影される。網膜には数億個の神経細胞があり,ここで光学的な映像が電気信号に変換される。…
…水晶体が混濁した状態をいい,俗に〈しろそこひ〉ともいう。視力障害,失明の原因となる最も一般的な疾患である。…
…眼球の壁は,外側から内側に向かって,強膜,脈絡膜,網膜という3層構造をなし,前方の強膜は透明になって少し突き出し,角膜となる。また脈絡膜の前縁は小さなひだ状の毛様体となり,透明な繊維でできたチン小体を介して水晶体に連なる。一方,毛様体から水晶体の前方に虹彩(こうさい)がのび,瞳孔(どうこう)が形成される。…
※「水晶体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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