酸化鉄(読み)さんかてつ(英語表記)iron oxide

翻訳|iron oxide

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

酸化鉄
さんかてつ
iron oxide

(1) 酸化鉄(II),酸化第一鉄 FeO。黒色粉末,融点 1370℃,比重 5.7。空気中で容易に酸化される。強い塩基で,二酸化炭素を吸収する。酸に易溶,水,アルカリに不溶。緑色の熱線吸収ガラス,エナメルの製造,触媒などに使用される。(2) 四酸化二鉄(III)鉄(II),四酸化三鉄 Fe3O4(FeIIFeIII2O4)。天然には磁鉄鉱として産し,自発磁化をもつ。黒色粉末,融点 1538℃,比重 5.16。電極,顔料,インキなどに用いられる。(3) 酸化鉄(III),三酸化二鉄 Fe2O3。粉末,融点 1550℃,比重約 5.1。色は製法によって変るが一般に赤色。天然には赤鉄鉱として広く産出し,赤色土壌の色の要因である。工業的にはベンガラという名で,顔料として,またガラス,貴金属,ダイヤモンドの研磨材として用いられる。高純度のものは半導体に,またマグネット,磁気テープの原料にもなる。

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デジタル大辞泉の解説

さんか‐てつ〔サンクワ‐〕【酸化鉄】

鉄の酸化物
酸化鉄(Ⅱ)(酸化第一鉄)FeO 蓚酸鉄(しゅうさんてつ)(Ⅱ)を空気を断って熱すると得られる強磁性の黒色粉末。
酸化鉄(Ⅲ)(酸化第二鉄)Fe2O3 天然には赤鉄鉱として産出。製法によって赤色・紫色・黒色などとなる。赤色粉末はベンガラともよばれ、さび止めや塗料、研磨材などに使用。
四酸化三鉄Fe3O4 天然には磁鉄鉱として産出。黒色、強磁性の物質。また、黒さびの主成分。電極・顔料などに使用。

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百科事典マイペディアの解説

酸化鉄【さんかてつ】

(1)酸化鉄(II)FeO。比重5.9,融点約1370℃。黒色発火性の粉末。水素で還元すると純鉄が得られる。シュウ酸第一鉄FeC2O4を空気を断ち焼いてつくる。(2)酸化鉄(III)Fe2O3。比重5.1〜5.2,融点1550℃。水に不溶の赤色粉末。常磁性。一度強熱したものは酸に難溶。顔料(弁柄),宝石等の研磨材に使用。赤鉄鉱として産する。(3)四酸化三鉄Fe3O4。比重5.2,融点1538℃。かなりよく電気を通す黒色粉末。強磁性。水に不溶。一度融解したものは熱濃硝酸にも不溶。電極,顔料,インキなどに使用。磁性材料として磁気テープなどに使用。酸化鉄(III)を水蒸気を含む水素で還元するなどしてつくる。天然には磁鉄鉱として産。

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栄養・生化学辞典の解説

酸化鉄

 (1) 酸化鉄(II)FeO (mw71.85).一酸化鉄ともいう.(2) 酸化鉄(III)Fe2O3 (mw159.69).三二酸化鉄,ベンガラとよばれる色素で食品添加物.使用制限がある.

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世界大百科事典 第2版の解説

さんかてつ【酸化鉄 iron oxide】

酸化数IIおよびIIIの鉄の酸化物と,両方の鉄を含む酸化物が知られている。
[酸化鉄(II)]
 化学式FeO。シュウ酸鉄(II)C2O4Fe・2H2Oを空気を断って強熱するか,酸化鉄(III)を加熱して鉄粉や水素などで還元すると得られる。黒色粉末。融点約1370℃。不定比化合物でFexO(x<0.95)の組成をもつ。198K以下で反強磁性。低温でつくったものは反応性が強く,発火性で,水を分解する。水素により容易に還元されて鉄になる。

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大辞林 第三版の解説

さんかてつ【酸化鉄】

酸化鉄(Ⅱ)。化学式 FeO 黒色発火性粉末。シュウ酸鉄(Ⅱ)を空気を断って焼くと得られる。
酸化鉄(Ⅲ)。化学式 Fe2O3 天然には赤鉄鉱として産出するが、工業的には硫酸鉄を焼いてつくる。赤色の粉末。ベンガラとして古くから赤色顔料や金属・ガラスの研磨また製鉄の原料などに用いられている。三酸化二鉄。三二酸化鉄。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

酸化鉄
さんかてつ
iron oxide

鉄と酸素の化合物。3種類が知られているが、いずれも厳密には定比例の法則には従わない。すなわち、それぞれの組成は、理想的にはFeO、Fe2O3、Fe3O4であるが、実際には簡単な整数比ではなく、しかも、存在条件や製法によって、ある程度の幅をもっている。
(1)酸化鉄()(酸化第一鉄) 鉄を酸素分圧を低くして575℃以上に加熱したのち急冷すると黒色の結晶として得られる。大気圧の下ではFe0.95Oが組成の限界である。これに金属鉄を加え、50キロ気圧の下で770℃に保つと、初めて化学量論的組成のものが得られる。いずれも黒色の結晶で、塩化ナトリウム型構造をとる。198K以下で低対称性の変態となり、反強磁性を示す。シュウ酸鉄()FeC2O4を空気を断って熱分解しても得られるが、これは黒色発火性の粉末で、高温で処理すると反応性は低下する。水素によって還元され鉄を生ずる。この反応は純鉄の製法の一つとして用いられる。
(2)酸化鉄()(酸化第二鉄) 鉄()塩の加水分解より生ずる赤褐色の水和酸化鉄(α(アルファ)-水酸化鉄())を200℃で熱すると赤褐色粉末として得られる。工業的には鉄鋼工業やめっき工業の廃液から生成する硫酸鉄を熱分解して製造する。このようにして得られたものはα-酸化鉄とよばれ、天然には赤鉄鉱として産出する。常磁性の物質で、三方晶系に属し、α-アルミナ型構造をとる。製法によって暗赤色から鮮赤色まで色調が変わる。湿った空気から水分を吸収する性質があり、酸に徐々に溶ける。俗にべんがらとよばれ、赤色顔料やガラス研摩材に使われる。
 酸化鉄()の製造にあたって、四酸化三鉄(酸化二鉄()鉄())を原料としてこれを注意深く熱するか、あるいはリン鉄鉱(γ(ガンマ)-水酸化鉄())を加熱すると、γ-酸化鉄とよばれる別の型の酸化鉄が得られる。等軸晶系に属し、スピネル型構造をとる。強磁性を示す。不安定な変態で天然には存在しない。空気中で約400℃以上に熱するとα-型に変わるが、真空中では250℃で四酸化三鉄を生ずる。
(3)酸化二鉄()鉄()(酸化第一鉄第二鉄) 四酸化三鉄も正しい名称であるが、誤って四三酸化鉄とよばれることもある。天然には磁鉄鉱として存在し、赤鉄鉱とともに鉄の重要な鉱石である。純粋なものは、酸化鉄()を、水蒸気を含んだ水素で還元することによって得られる。鉄を空気、酸素または水蒸気中で加熱しても得られるが、この場合は表面だけにとどまる。黒色、強磁性の物質で、鉄()と鉄()の混合酸化物と考えられ、逆スピネル構造をとる。鉄の酸化物中もっとも安定である。粉末状のものは酸に溶けるが、いったん融解して固めたものは強固な不動態となり、酸に溶けないだけでなく、強力な酸化剤にも侵されない。電極、黒色顔料、印刷インキなどに用いられる。[鳥居泰男]

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