日本大百科全書(ニッポニカ) 「社会力」の意味・わかりやすい解説
社会力
しゃかいりょく
social forces
アメリカの社会学者ウォードらの用いた概念。ウォードは、コントから社会静学と社会動学の区別を受け入れ、スペンサーから決定論的・進化論的な見解を継承して、宇宙論的・進化論的な哲学を構想した。それによると、宇宙を動かす普遍的な力universal forcesが社会に現れたのが社会力で、この社会力は次のものからなるとした。まず本質的な力と非本質的な力とが区別され、本質的な力は、個体発生的・保存的な力と、系統発生的・再生的な力とに分けられる。前者は積極的な快楽を求める力と否定的な苦痛を避ける防御的な力が、後者は直接的には性的で好色な欲望と間接的には親子と血縁との愛情とがあげられる。非本質的な力としては、審美的な力、感情的(道徳的)な力、知的な力とがあげられる。本質的な力は肉体的な力であり、非本質的な力は精神的な力であるが、ウォードにとっては、精神的な力が本来的に「社会発生的」であり、社会は「心的諸要因の働き」と定義される。
[古賀英三郎]