社会力(読み)しゃかいりょく(その他表記)social forces

日本大百科全書(ニッポニカ) 「社会力」の意味・わかりやすい解説

社会力
しゃかいりょく
social forces

アメリカの社会学者ウォードらの用いた概念。ウォードは、コントから社会静学と社会動学の区別を受け入れ、スペンサーから決定論的・進化論的な見解を継承して、宇宙論的・進化論的な哲学を構想した。それによると、宇宙を動かす普遍的な力universal forcesが社会に現れたのが社会力で、この社会力は次のものからなるとした。まず本質的な力と非本質的な力とが区別され、本質的な力は、個体発生的・保存的な力と、系統発生的・再生的な力とに分けられる。前者は積極的な快楽を求める力と否定的な苦痛を避ける防御的な力が、後者は直接的には性的で好色な欲望と間接的には親子血縁との愛情とがあげられる。非本質的な力としては、審美的な力、感情的(道徳的)な力、知的な力とがあげられる。本質的な力は肉体的な力であり、非本質的な力は精神的な力であるが、ウォードにとっては、精神的な力が本来的に「社会発生的」であり、社会は「心的諸要因の働き」と定義される。

[古賀英三郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「社会力」の意味・わかりやすい解説

社会力
しゃかいりょく
social forces

社会的行動,社会現象の原因と考えられる概念。 19世紀末から 20世紀初頭にかけて,アメリカの社会学者 L.F.ウォード,E.ロスらが用いた概念で,人間の衝動,欲望,関心などの生理的,心理的概念を,あらゆる人間の行動の根底に横たわる原動力,すなわち社会力として分析し,社会学を心理学的立場から基礎づけようとした。ウォードの欲望説,A.スモールの関心説,W.マクドゥーガルの本能説,W.I.トマスの願望説などがそれである。これに対して,外在的な集合表象や文化的事実を重視する立場や,K.レビンの流れをくむ場理論の立場なども,異なった観点から社会力の概念を扱っているものといえる。またレビンの示唆を受けて,社会力の概念を力学観の導入により抽象化されたベクトル概念として規定しようとする試みもある。

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