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神学・政治論 しんがく・せいじろんTractatus theologico-politicus

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

神学・政治論
しんがく・せいじろん
Tractatus theologico-politicus

オランダの哲学者バルフ・デ・スピノザの著作。 1665年執筆中の『エティカ』を中断して着手され,70年出版。オランダ国内で正統カルバン派の力が強大となり,宗教的寛容と自由統治の共和派が圧力を受けるようになった情勢のなかで後者に理論的支持を与えるために書かれた,旧約聖書に基づく政治論。全 20章の前半,特に7~10章では,旧約聖書の成立年代や作者について史的批判を加え,近代聖書学に礎石をおいた。著者は思想と発言の自由を守るために,無神論者という非難を退け,聖書は不寛容を教えているのではないとし,この立場を尊重することが思想・発言の自由を守ることと一致するとした。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

神学・政治論
しんがくせいじろん

オランダの哲学者スピノザの主著の一つ。1670年刊。原題は“Tractatus Theologico-Politicus”。本書は、教会に対する国家の優位を前提に、思想・言論の自由の確立を目ざして徹底した聖書批判を展開する。その方法は、聖書を一個の自然物として扱い、自然研究同様、とらわれない精神で、つまり理性による解釈すら排して、聖書を聖書そのものから解釈しようとするものであった。預言、預言者、選民、神の法、奇蹟(きせき)など聖書全般に検討を加えるが、従来の諸説を偏見ときめつける革命的な内容であったため、著者名を秘し、出版地・発行人を偽って公刊せざるをえなかったにもかかわらず人々は容易に真の著者を探り当てて糾弾し、1672年、本書を禁書に指定してしまった。「無神論者」と非難され続けたスピノザが本書に寄せた汚名の除去という実践上の意図は、みごとに挫折(ざせつ)したが、聖書批判の方法論は後世、本書を通じ一般に受け入れられている。なお、本書の政治論は『国家論』に敷衍(ふえん)された。[佐々木雄]

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