秀文(読み)しゅうぶん

改訂新版 世界大百科事典 「秀文」の意味・わかりやすい解説

秀文 (しゅうぶん)

1424年(応永31)に来日した李朝画人。生没年不詳。基準作に《墨竹図冊》があり,〈永楽甲辰二十有二歳次於日本国渡来北陽写,秀文〉の落款と〈秀文〉印をもち,李朝画風を示す。同種印章を捺した《山水図屛風》(クリーブランド美術館),《林和靖図》(京都国立博物館)がのこるが,《墨竹図冊》の画風とは異なり,別人の筆かと思われる。江戸時代の画史が来朝明人で越前朝倉家に仕え曾我派の祖となったと伝える〈曾我(李)秀文〉との異同は不明であるが,活躍期は共通する。また,1530年(享禄3)に飛驒地方で没したという〈秀文〉は年代が異なり,別人であろう。
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朝日日本歴史人物事典 「秀文」の解説

秀文

生年:生没年不詳
室町前期に李朝朝鮮より来日した画家と推測されている。一般に姓を李,また後の曾我派の祖とするが確証はない。かつては周文と混同されていたが別人である。近年発見された唯一の基準作「墨竹画冊」(個人蔵)には「永楽甲辰二十有二歳次於日本国渡来北陽写秀文」という落款がある。この年記は和暦の応永31(1424)年に相当し,この年周文が朝鮮より帰国しているため,周文が帰国の際,共に来日した画家とも推測されている。従来より漠然と指摘されている室町水墨画と李朝絵画の関係を考えるうえで鍵を握る存在である。他に秀文筆と伝える作品に「山水図屏風」(米・クリーヴランド美術館蔵),「林和靖図」(京都国立博物館蔵)など数点があるが,その作風はかなり異なったものである。<参考文献>内藤浩「秀文考」(『ミュージアム』365号)

(山下裕二)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「秀文」の意味・わかりやすい解説

秀文
しゅうぶん

室町時代の水墨画家。中国,明から帰化して越前朝倉家の家老曾我氏に婿入りし,曾我派の祖となったといわれる。飛騨地方に遺跡が伝わる。遺作『墨竹図画冊』の年記によって,応永 31 (1424) 年頃の活躍が知られるが,昔から周文と混同されるなど複雑な問題が多い。近年は画風から出身国を朝鮮とする説が強い。秀文筆とされる作品はほかに数点伝わるが確かでない。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「秀文」の解説

秀文 しゅうぶん

1403-? 朝鮮王朝の画家。
太宗3年生まれ。応永31年(1424)に来日。この年に周文が朝鮮より帰国しているため,同行したとも推測されている。越前(えちぜん)(福井県)の曾我派の祖と伝承されてきた。作品に「墨竹画冊」「林和靖図」など。姓は李。

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