伝染性紅斑は頬がリンゴのように赤くなることから、通称「リンゴ病」とも呼ばれています。5~9歳ごろに最も多く発症します。
原因はパルボウイルス科エリスロウイルス属に属するB19ウイルスの感染です。赤血球の膜表面にあるP抗原を受容体として感染し、主に
10~20日の潜伏期ののち、子どもでは通常、頬がリンゴのように真っ赤になり、その後手足にレース状の発疹が現れます。いったん消えた発疹が再び現れることもあります。成人では頬の紅斑を認めないことが多く、手足の発疹、全身
通常数日の経過で自然に治ります。発疹が現れるころにはもう感染力はほとんどなく、発疹出現前1週間くらいの感染力がいちばん高いといわれています。
妊婦が感染すると胎児に感染し、重度の貧血から胎児死亡、流早産、胎児水腫(すいしゅ)を起こすことがあるため注意が必要です。また、慢性貧血の患者さんがかかると、重い症状を起こすことがあります。
通常、小児では典型的な臨床症状から診断されることがほとんどですが、成人の場合、ウイルス学的な検査をしないと風疹との区別が困難です。血清中のウイルス遺伝子(DNA)をPCR法で検出したり、急性期と回復期に採血してIgG抗体の陽転あるいは上昇を確認したり、急性期の特異的IgM抗体を検出することで診断します。
通常は対症療法のみです。症状が現れた時はすでに感染力がほとんどないため、感染予防が困難な病気です。ワクチンもありません。免疫不全の患者さんや慢性貧血のある患者さんでは、発症時に
症状が出た時にはほとんど感染力はないので、学校、幼稚園、保育所では登校・登園停止の疾患にはなっていません。ただし、基礎疾患がある人、妊婦などは、かかりつけの小児科、内科、産婦人科を受診し、よく相談する必要があります。
多屋 馨子
両方の頬に紅斑(リンゴのようにみえる)ができることを特徴とする学童期の急性ウイルス性疾患です。
ヒトパルボウイルスB19という小さなウイルスが原因です。学童期(6~12歳)にかかることが多く、冬から春にかけて、施設、学校で流行性に発生します。経気道感染といわれ、発疹が現れた時には伝染力はないといわれています。
16~17日の潜伏期のあと、頬部に紅い
慢性溶血性(ようけつせい)貧血の患児では、本症により
末梢血白血球数が減少傾向になり、網状赤血球も減少し、消失します。診断は通常、流行状況、学童の感染が多いこと、顔面の蝶形紅斑などが認められれば困難ではなく、検査をすることはありません。
この原因ウイルスの特効薬はありません。必要に応じて対症療法を行いますが、予後は良好です。
発疹が現れた時にはウイルス排出はなく、伝染力はありませんが、発疹が消えてから登校したほうがよいでしょう。予防法はありません。
浅野 喜造
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
一般に〈りんご病〉,欧米では〈slapped cheek disease〉といわれる発疹性疾患で,ウイルスの感染によって起こると推測されているが,病因は現在不明である。年長幼児,低学年児童に好発し,乳児や成人には少ない。春秋に多く発生し,保育所などの施設内での小流行がみられる。症状は,1~2週間の潜伏期ののち突然発疹が現れる。ときに微熱が出たりリンパ節が腫張することがある。発疹は,両ほおに対称性に生じ,鮮紅色のやや隆起した浮腫状の紅斑で,チョウのはねの形をなし,熱感がある。やや遅れて四肢にも発疹が現れ,肩や臀部にも広がり,約半数の場合に搔痒(そうよう)感がある。以後発疹はしだいに融合し,中心は退色してレース様,網目様,環状を呈する。発疹は,通常1週間くらいで消失するが,ときに消失,再発をくり返すことがある。重篤な合併症はないが,成人の場合は関節炎を併発することがある。発病の初期には白血球が減少し,リンパ球が増加することがあるが,一定しない。特別の治療法はなく,対症療法を行う。
執筆者:西村 忠史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
全身に特有な発疹(ほっしん)の現れる幼児や学童の伝染病で、まれに乳児や成人にもみられる。原因はパルボウイルスB19(parvovirus B19)。保育所などで小流行がみられ、流行季節はおもに春季、温暖の候で、一度かかれば終生免疫が得られる。潜伏期は1、2週間。前駆症状はほとんどなく、突然発疹が現れる。微熱が出たり、リンパ節が腫脹(しゅちょう)することもある。発疹は顔に初発し、腕や脚部、臀(でん)部によく現れ、胸、腹、背中にはあまりみられない。
顔の発疹は、両頬(ほお)がリンゴのように一面に赤くなり、リンゴ病と俗称される。欧米ではslapped cheek disease(平手で頬をたたいたように赤くなる病気)とよばれている。四肢や臀部の発疹は、10円銅貨くらいの大小さまざまの赤い円形で、個々の発疹の周辺部はやや隆起して中心部の色が淡く、レース編み状または地図状を呈する。通常1週間前後で消失するが、日光に当たったり摩擦すると、再発を繰り返すことがあるので注意する。
予後は良好で、特別な治療を要しないが、発熱があれば安静にし、皮膚のかゆみが強ければ抗ヒスタミン剤を用いるなど、対症療法が行われる。
[柳下徳雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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