改訂新版 世界大百科事典 「あせも」の意味・わかりやすい解説
あせも
prickly sweat
汗のために皮膚に発生する小さい吹出物で,医学的には汗疹miliariaという。汗を分泌する汗腺には,エクリン腺とアポクリン腺の2種類があり,ふつうの汗はエクリン腺から分泌されるものである。エクリン腺は,全身の皮膚に200万~400万個存在するといわれている。皮膚内で真皮の深い部分に存在するエクリン腺から分泌された汗は,汗管という管を通り,汗口から皮膚表面に排泄される。しかし,なにかの原因で汗口や汗管が閉塞されると,汗が汗管内に貯留し,その内圧のため汗管壁が破れて表皮あるいは真皮に汗がしみ出て,あせもができる。汗口の閉塞は,温度や湿度が高いこと,外用薬の刺激,発汗量が多いことなどで起こりやすい。子どもは大人にくらべ,単位面積当りの発汗量が多いために,あせもができやすい。また,あせもは,くび,わきの下,ひじの内側,またなどのような皮膚がすれあう場所にできやすい。汗が貯留する位置により,次の3種類に分類される。(1)水晶様汗疹miliaria crystallina 表皮最上層の角層内に汗がたまった白いあせもで,かゆみはなく2,3日以内に簡単に治る。高熱のでる病気で,熱が下がったときなどにできる。(2)紅色汗疹miliaria rubra ふつうみられるあせもであり,表皮内に汗がたまり,その部分の毛細血管が拡張した赤いあせもで,神経終末部が刺激されてかゆみがある。(3)深在性汗疹miliaria profunda 表皮直下の真皮内に汗がたまった深いあせもで,熱帯地方などでみられる。なお,乳幼児などの頭,顔などのあせもが化膿し,しこりになったのが〈あせものより〉(多発性汗腺膿瘍)である。あせもを予防するには,涼しい風通しのよい環境にし,行水や入浴で汗やよごれを落としたのち,少量のパウダーを使用する。下着は吸湿性のよい木綿製品にする。治療法としては,ホウ酸亜鉛華軟膏や石炭酸亜鉛華リニメントをうすくぬって,その上からパウダーを使用する。汗疹性湿疹へ進行している部分では,緩和な副腎皮質ホルモン軟膏を使う。あせものよりは小切開し,膿を出す必要がある。
→汗腺
執筆者:藤澤 龍一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報