竜図公案(読み)りゅうとこうあん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「竜図公案」の意味・わかりやすい解説

竜図公案
りゅうとこうあん

中国、宋(そう)初の判官包拯(ほうじょう)による公案(犯罪の捜査裁判)の形式をとった短編小説集。『包公案』ともよばれる。宋代から戯曲小説として語り始められてきた包公説話は、元曲として発展を遂げ、明(みん)初にはいくつかの連続物を構成していたと推定される。その後向敏中(こうびんちゅう)、周新といった判官の公案記録の取り込み、当時成立していた文語口語双方の小説からの改作がなされ、万暦(1573~1619)初めに百回本の『包竜図判百家公案』が成立した。『竜図公案』はこれを受け、3分の1ほどを当時流行の『廉明(れんめい)公案』などの小説集と差し替える一方順序も改め、各回を完全に独立した一話として明末に刊行したものであり、繁本と簡本とがある。江戸裁判物への影響は『棠陰比事(とういんひじ)』に次いで大きい。

[大塚秀高]

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百科事典マイペディア 「竜図公案」の意味・わかりやすい解説

竜図公案【りょうとこうあん】

中国,明代の小説。作者不明。別名を《包公案》。宋の竜図閣待制包拯(ほうじょう)〔999-1062〕の名裁判物語集。公案(裁判)小説の代表。100話,66話,63話の3本が伝存日本の〈大岡裁(さばき)〉(大岡政談)中に同工異曲の話が多い。
→関連項目三侠五義

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「竜図公案」の意味・わかりやすい解説

竜図公案
りゅうとこうあん
Long-tu gong-an

中国,明の裁判小説。別名『包公案』。作者未詳。 10巻。北宋仁宗の頃の名判官包拯 (ほうじょう) にまつわる伝説を短編小説とし,集めたもの。版本に繁簡2種があり,繁本は 100話,簡本は 66話から成る。日本の大岡政談多く素材を与えている。

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世界大百科事典(旧版)内の竜図公案の言及

【公案】より

…中国において,公の案つまり公府が是非を判断した案牘(あんとく),争論中の事件や裁判の文書を意味し,のちには裁判物語を指す。その代表的な作品は,宋代の名裁判官として名高い包拯を主人公にした明代の小説《竜図公案》10巻で《包公案》《竜公案》ともよばれる。もともと《元雑劇》400余本のうち,公案故事に題材をとるものは10%をこえ,とくに包拯を主人公にするのが多かったが,《竜図公案》では,《元雑劇》をはじめ,民間伝説などに題材をもとめつつ,主人公をすべて包拯に仮託したものである。…

【三俠五義】より

…1879年(光緒5)初版。北宋の名臣包拯(ほうじよう)(999‐1062)の名裁判ぶりを描いた明代の《竜図公案》を発展させ,これを軸として〈三俠(3人の俠客)〉と〈五鼠(5人の義賊)〉の活躍ぶりを描き,《水滸伝》の面白さをねらっている。のち文人の兪樾(ゆえつ)が増補して《七俠五義》(1889)を出し,ほかにも続作が出た。…

※「竜図公案」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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