童貞生殖(読み)ドウテイセイショク

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「童貞生殖」の意味・わかりやすい解説

童貞生殖
どうていせいしょく

生物の単為生殖の一つで、精子が卵の核を必要とせずに新個体を発生させることをいう。巣為生殖では、未受精卵から個体発生する処女生殖が多く、童貞生殖が自然におこるのは植物だけで、動物の場合は人為童貞生殖しか報告されていない。ツツジやマツヨイグサなどでは、交雑のときに雄性配偶子が核の消失した卵細胞と合体して胚(はい)を形成することがある。イモリの卵に放射線を照射して細胞核を破壊してから受精させると、卵の細胞質と精子核とから新個体が発生する。また、イモリの卵核を微小なガラス管で吸い取ってから受精すると、侵入した精子核と無核卵から個体が発生する。童貞生殖で発生した染色体の単相個体は虚弱であるが、なかには正常の個体と変わらないものもある。しかし、これらの個体では発生途中で染色体が複相になっていることが多い。

高杉 暹]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「童貞生殖」の意味・わかりやすい解説

童貞生殖
どうていせいしょく
androgenesis

雄性生殖ともいう。広義の単為生殖の一つ。卵核を除き精子核だけで卵を発生させる現象。たとえばイモリの受精卵から雌性前核だけを抜取ったり,殺したりすると,単相の雄性前核から正常な発生が起る。これに種間交雑を組合せると,卵片発生と同様,異なった種の核が発生に及ぼす影響を研究することができる。植物でもマツヨイグサその他で,雄性配偶子が,核のない卵細胞に入り胚をつくることがある。

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世界大百科事典(旧版)内の童貞生殖の言及

【単為生殖】より

…そのような発生を単為発生といい,また,単為発生が正常の生殖過程の一部として認められる場合に単為生殖という。雌性配偶子からの単為生殖を処女生殖,雄性配偶子からの単為生殖を童貞生殖と呼ぶこともある。 植物では,半数体の配偶子からの単為生殖の例がシロバナヨウシュチョウセンアサガオなどで知られているが,一般に生じた植物体は全体に小さくて,種子をつくらない。…

※「童貞生殖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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