日本大百科全書(ニッポニカ) 「第二戦線」の意味・わかりやすい解説
第二戦線
だいにせんせん
second front
戦争において、敵方の戦力を分散させるために、主要な戦線以外に設ける戦線。第一次世界大戦においては西部戦線・東部戦線が第一戦線であったのに対して、バルカン戦場が第二戦線となった。第二戦線の形成が歴史上でとくに問題となったのは、第二次大戦においてである。
ドイツの対ソ連攻撃開始以後、ドイツの主要兵力はソ連すなわち東部戦線に集中した。ソ連は、第二戦線として米英軍がフランスへ上陸してドイツ軍の背後を牽制(けんせい)することを要求し、1942年5月にはルーズベルト、チャーチルによって第二戦線を設けることが確約された。しかし、フランス上陸作戦よりも北アフリカ作戦およびイタリア上陸作戦を重視するチャーチルの主張によって、米英軍は南ヨーロッパに作戦を展開し、ソ連の不満を買った。テヘラン会談(1943.11)において第二戦線の設定が確認され、44年6月、ようやく米英軍は北フランス、ノルマンディーに上陸して第二戦線を形成した。しかし、この第二戦線形成の遅延とソ連の自力による総反撃は、ソ連の戦後ヨーロッパに対する発言権を強めた。
[斉藤 孝]