六訂版 家庭医学大全科 の解説
筋強直性ジストロフィー症
きんきょうちょくせいジストロフィーしょう
Myotonic dystrophy
(運動器系の病気(外傷を含む))
どんな病気か
筋萎縮、筋力低下が四肢遠位と顔面に特徴的な分布を示し、筋強直と特有の多系統臓器障害(後述)を示す常染色体優生遺伝の筋肉の病気です。強直とは筋肉の収縮が過度に持続し、
原因は何か
遺伝子の病気です。常染色体優生遺伝で19番染色体長腕に位置するMTPK遺伝子の非翻訳領域に、CTGの3塩基反復配列数が異常に伸張しています。臨床的には、成人に発症する成人型と、新生児期ないし乳児期早期に発症する先天型に分類されます。
一般に、CTGの3塩基反復配列数が多いほど早期に発症し、重症となります。世代間で繰り返し、回数の増加が生じることにより、成人型を有する母親からより重症の先天型の子どもが出生します。
症状の現れ方
●成人型
思春期に、手を強く数秒間握らせ、急に手を開くようにいっても、筋の強直のために急には開くことができない筋強直現象で発症することが多くみられます。
筋力低下や筋
その他、
●先天型
通常、この病気の母親から生まれた新生児にみられます。呼吸困難、哺乳不良、低緊張が問題となります。出生時にフロッピーインファント(ぐにゃぐにゃ乳児)として気づかれることもあります。強い筋力低下があり、知能低下も著しい最重症型です。大部分が10代までに死亡するといわれています。
新生児仮死がなく人工呼吸器から離脱できれば、ほとんどの場合で症状が改善するといわれています。筋強直は幼児期には出現しにくく、10歳前後に現れてきます。思春期以降になると、成人期発症とほぼ同じ症状を示すようになります。
検査と診断
血液検査では、クレアチンキナーゼは正常または軽度上昇、成人期では糖代謝異常がみられる場合もあります。筋電図では、針を筋に刺入した時に、高頻度の筋放電が反復発射され、特徴的なミオトニー放電や急降下爆撃音に似た音が認められます。
特徴的な臨床像と筋電図でほぼ診断できます。確定診断は遺伝子診断で行います。
治療の方法
根本的な治療法はなく、対症療法が中心となります。筋強直に対する治療はほとんど不要です。筋力低下による下垂足や足部変形には、短下肢装具や整形外科的手術で対応し、合併症である糖尿病、
嚥下(えんげ)障害が強い場合は、やむなく経管栄養や
本症に対して麻酔をする際には高熱、筋緊張亢進や電解質異常を来し、悪性高熱の類似の症状が出ることがあるので注意が必要です。
病気に気づいたらどうする
神経、筋を専門とする医療機関を受診してください。
藤井 正司
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報