翻訳|powder
固体微粉子の集合体をいい、粉粒体particulate materialともいう。重力などの外力に対して粒子相互間の力(付着力など)が比較できる程度に大きい場合をいい、重力=付着力を境として大きいものを粒体、小さいものを粉体ということもある。その境界はだいたい数十マイクロメートルである。粉体は粒子相互作用でその形を保持し外力に対しても強く抵抗する点では固体的であるが、一方、容易に変形・流動するという点では流体的で、固体、流体とは独立の物質形態として取り扱われることが多い。
工業的に固体原料を粉体として取り扱う利点は、均一な混合、異種成分の分離、流動性などの機械的取扱いが容易であり、また比表面積(粒子の単位面積当りの表面積)が大きいため、反応、物質移動速度が大きく、焼結、溶解を行うのに都合がよいことである。
[早川豊彦]
粉体は生成過程、粒度、粒度分布、形状、周囲の状況などでその性質が著しく異なってくる。したがって具体的なある特定条件の下においてのみその性質を述べることができるが、一般的性質といえるものを流体、固体と比較すると次のとおりである。(1)不連続性 流体、固体は完全な連続体であるが、粉体は個々の独立した粒子の集合体であるため不連続性が著しい。このためホッパーの閉塞(へいそく)、溢汪(いつおう)、凝集などが突発的に生ずる。(2)比表面積が大 反応、物質移動速度が大きい。吸湿、粘着、粉塵(ふんじん)爆発などを生ずる。(3)粒子形状の不規則性 分散状態や充填(じゅうてん)状態でも単に重量、空隙(くうげき)率などを指定しただけでは変形、流動状態、透過率などは変動しやすい。粉体に関する現象は、粉体の不連続性と形状の不規則性のため著しく大きな変動をもつ。(4)流動性 粒度がある程度以上に細かいと、流体を吹き込むことにより流動化して流体のように流動する性質がある。
[早川豊彦]
これを系統的に分類すると次のようになる。(1)静力学的現象 粉体の堆積(たいせき)、充填、空隙率、粉体内部の圧力分布、安息角、内部摩擦角、塑性すべり、圧縮変形、固結強度、粉砕などの諸問題がある。(2)動力学的現象 サイクロンや遠心沈降機内の粒子の運動、空気輸送、小孔よりの粉体の流出、流動層やエアスライドなどと、両者の中間にあたる濾過(ろか)や固定層の透過度のような現象で、粒子―流体間、粒子相互間などの相関関係で運動状態が決定されるものである。(3)界面物理現象 粉体の界面を通じ、あるいは界面においておこる物理現象で、伝熱、電気伝導、摩擦帯電や光、音、波などの界面散乱現象などがある。(4)界面化学現象 吸着、吸湿、乾燥、粉塵爆発、晶析、溶解、焼結、結晶成長、固体反応などである。
粉体を扱う場合は、粉体の生成過程、その置かれた環境と粉体の基本的性質(粒径および粒度分布、真比重、空隙率、安息角、粉体の堆積、付着性など)をよく調べることがたいせつである。このような粉体の物性・応用技術を研究するのが粉体工学powder technologyである。
[早川豊彦]
『久保輝一郎他編『粉体――理論と応用』改訂二版(1979・丸善)』
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…粉体と粒体のこと。粉体とは微細な固体粒子の集合体であり,粒体とは比較的粗い固体粒子の集合体である。…
※「粉体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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