改訂新版 世界大百科事典 「粘液酸」の意味・わかりやすい解説
粘液酸 (ねんえきさん)
mucic acid
ガラクトースの糖酸で,ガラクト糖酸,ガラクタル酸galactaric acid,あるいはムチン酸とも呼ばれる。化学式C6H10O8。ガラクトースまたはその誘導体を含む物質(木材からとれるガラクタンやトウモロコシのペントサンなど)を硝酸で酸化すると得られる。融点225℃の結晶。メソ型の立体異性体に相当するため,不斉炭素原子が存在するにもかかわらず光学活性を示さない。フェーリング液を還元しないという糖酸の一般的性質を示すが,アンモニア性硝酸銀とは反応する。エチルアルコール,エーテルに溶けにくい。冷水には溶けない。この性質を利用して多糖類中のガラクトースを定量することができる。水溶液を加熱すると6員環状のモノラクトンとなり,酸と加熱すると針状晶のデヒドロ粘液酸(2,5-フランジカルボン酸)を与える。アンモニウム塩を加熱するとピロールが生成する。また,乾留により,2,5-フランジカルボン酸を経て焦性粘液酸(2-フランカルボン酸,ピロ粘液酸ともいう)を生ずる。焦性粘液酸は無色の板状または針状晶,融点133℃,沸点230~232℃,100℃で一部昇華する。
執筆者:小林 啓二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報