アルデヒドや還元性糖類の検出,定量に用いられる試薬。ドイツの化学者フェーリングHermann von Fehling(1812-85)が1848年に創製したもので,銅(Ⅱ)イオンの酒石酸錯塩を主体とする強アルカリ性の青色溶液をいう。長時間放置すると分解して還元性物質を生じるので,あらかじめ次のA,B2液を別々に調製しておき,使用直前になって両液を等量混合して用いる。
A液 硫酸銅CuSO4・5H2O69.315gを水に溶かして1lにしたもの。
B液 ロッシェル塩(酒石酸カリウムナトリウム)NaKC4H4O6・4H2O346gと水酸化ナトリウムNaOH100gを水に溶かして1lにし,アスベストでろ過したもの。
フェーリング液に還元性物質を加えて穏やかに温めると,銅(Ⅱ)が還元されて銅(Ⅰ)となる。銅(Ⅰ)の錯塩の安定度は低いのでただちに溶液中の水酸イオンOH⁻と結合して水酸化銅(Ⅰ)CuOHを生じて黄色に濁る。さらにこれを煮沸すると脱水されて酸化銅(Ⅰ)Cu2Oの橙赤色沈殿を生じる。生じた酸化銅(Ⅰ)の重量分析や比色分析などにより還元性物質の定量を行うことができる。ヘキソース1分子はほぼ5原子の銅を還元する。
執筆者:日向 実保
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アルデヒド基-CHOが還元性をもつことを利用して、アルデヒド基を検出する試薬。1848年にドイツのフェーリングが考案したのでこの名でよばれる。結晶硫酸銅(Ⅱ)35グラムを水500ミリリットルに溶かした溶液(第1液)と、酒石酸ナトリウムカリウム170グラムと水酸化ナトリウム50グラムを500ミリリットルの水に溶かした溶液(第2液)をつくり、別の瓶に保存し、使用するときに等容量をとり混合する。混合液は硫酸銅溶液より濃い青藍(せいらん)色であるが、アルデヒドを加えると、銅(Ⅱ)イオンは還元されて赤色で不溶性の酸化銅(Ⅰ)になる。したがって、液は無色になり赤色の沈殿を生ずることからアルデヒドが検出できる。この反応は、脂肪族アルデヒドや糖類では陽性であるが、芳香族アルデヒドでは陰性である。
[廣田 穰 2015年7月21日]
還元糖の検出,定量にもっとも広く用いられている試薬.硫酸銅溶液(CuSO4・5H2O34.6 g を水500 mL に溶かす)と酒石酸ナトリウムカリウム液(酒石酸ナトリウムカリウム173 g と水酸化ナトリウム50 g を水500 mL に溶かす)の等量を使用直前に混合してつくる.銅(Ⅱ)イオンが錯化合物として溶けている深青色のアルカリ溶液で,これに還元糖を加えて煮沸すると CuⅡは還元されてCu2Oの赤色沈殿を生成する.還元速度は糖の種類によって異なるが,アルドース,ケトースともに反応する.反応は化学量論的ではないが,ヘキソース 1分子はだいたい5原子の銅を還元する.この試験の感度はだいたい糖液1 mL につきグルコース約0.01 mg である.生じたCu2Oは,重量法(アリーン法),定量法(ベルトラン法),比色法(ソモジ法)などによって定量される.また,この溶液はヘミセルロースなどの多糖と不溶性の銅錯体をつくるので,それらの精製にも利用される.
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