糸に関係する印章の意。15世紀に中国明から輸入する生糸は,1斤につき1個の印を添えて送られ,着荷の際に斤量を検査して,その受領証にこの糸印をおして先方へ返送し取引の証とした。この際に印章は先方へは返さずに荷受人の手もとにとどめたのでその数も多く,不用品となって世間に散らばった。明の鋳銅印で,印形として鈕(ちゆう)(つまみ)があり,獅子,竜,虎,猿,犬などの怪獣類や人物が鈕にかたどられ,印面も円形,方形その他多様であった。雅味豊かなことから好事家が愛玩し,15世紀以後には押印に好評を博した。こうした糸印の一つに豊臣秀吉の印がある。秀吉印は直径4cmの正円で印文は不詳。朱印として生涯使用したが,秀吉は印章には比較的むとんちゃくであったから,偶然手もとにあった糸印が秀吉印に利用されたと思われる。
→印判状
執筆者:荻野 三七彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
明(みん)からの輸入生糸(きいと)1斤(きん)ごとに付した銅印。室町時代、日明貿易によってわが国は中国から多量の生糸を輸入したが、輸入生糸には1斤(600グラム)につき1個の印を添付してあり、荷物到着後、斤量を検査し、異状なく受領したときは受領証にこの印を押捺(おうなつ)して荷主に返送した。このとき印章は先方に返さず荷受人の手元に残した。これらの印は鋳銅印でかならず鈕(ちゅう)があり、鈕には竜、獅子(しし)などのほか、犬、猿などの動物や人物などさまざまの形のものがある。印面の形態も円形、方形など各種のものがあり、印文も文字の判読できるもの、単なる図形状のものなどさまざまである。
精巧なものではないが雅趣に富むものが多かったので、後世好事家の愛玩(あいがん)用として利用された。著名人の使用したものとしては、豊臣(とよとみ)秀吉が印判状に使用した円形印がこの糸印であるとされている。
[村井益男]
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