中国の宗教結社,道院に付属する慈善団体。1921年,山東省済南市で,杜黙静(?-1923)が乩示(けいし)(お筆先の神示)によって至聖先天老祖から《太乙北極真経》という経典を授かった。そこで済南道院が設立され,それ以後,老祖を最高神としマホメット,釈迦,老子,キリスト,項先師(孔子の師)の5教祖のほか,関羽をはじめ世界の聖賢仙仏すべてを神として配祀し,あらゆる劫(こう)すなわち災厄を解消し,世を救うために,内修(静坐),外修(慈善事業)の修道が行われた。23年,杜黙静の没後は,徐素一が指導者となり,済南道院を母院と称し,北京道院を総院と改めて全国組織の中心とし,全国240ヵ所以上(1940)の道院と30万とも500万~600万ともいわれる修道者を統轄した。なお,女子の修道者には,女道徳社がある。1922年,道院と不可分の関係にある紅卍字会が創設され,もっぱら慈善事業を行った。24年以後,日本の大本教とも関係をもっている。中華人民共和国成立の後は,反動的宗教として鎮圧されたが,香港,台湾,東京では,今も存続して活動している。
執筆者:坂出 祥伸
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紅卍教とも俗称された道院という中国の新興宗教と表裏一体の慈善団体。紅は赤誠を、卍は吉祥(きっしょう)雲海の仏相を表し、太陽のように恩恵の至らない所はないという意味。道院は1916~17年ごろ山東省でおこり、20年代末までに全中国に広まった。その宗旨は儒、仏、道、キリスト教、イスラム教の五教同源を説き、22年に紅卍字会を設立し、貧民救済、施薬施療、学校経営などの事業を手広く行った。24年道院は日本の大本(おおもと)教とも提携し、東京、神戸に道院を設けたことがあるが、大本教の禁止とともに日本国内での活動は停止された。新中国以後、道院はその他の新興宗教とともに邪教として禁止され、紅卍字会の活動も否定された。
[山下龍三]
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