静坐(読み)じょうざ(英語表記)jìng zuò

精選版 日本国語大辞典 「静坐」の意味・読み・例文・類語

じょう‐ざジャウ‥【静坐】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「じょう」は「静」の呉音 ) 仏語雑念を払い心を澄ましてすわること。
    1. [初出の実例]「須く静坐して道理を案じ」(出典:明和本正法眼蔵随聞記(1235‐38)五)

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改訂新版 世界大百科事典 「静坐」の意味・わかりやすい解説

静坐 (せいざ)
jìng zuò

ある一定時間,精神を統一して端坐することをいうが,《吾輩は猫である》に〈儒家にも静坐の工夫と云ふのがある相(そう)だ〉と見えるように,中国宋代に興った新しい儒学(道学)では心の修養法として重視された。道学者によれば,心は静(未発(みはつ))と動(已発(いはつ))の間を揺れ動くが,めまぐるしい現実に対処して心の主体性を喪失しないためには,心の静時におけるその本性涵養が必須であるとされる。このように現実の動の場を射程に入れたところに,禅家のいう坐禅と決定的な相違がある。これを実践したのは北宋の程子兄弟であるが,やがて李侗(りとう)(延平)をへて南宋朱熹(しゆき)(子)に継承される。朱熹は静坐の偏重が寂静主義(現実逃避)に陥りやすいのをおもんぱかって〈敬〉を提唱したが,晩年には〈半日静坐,半日読書〉の生活を送った。明の王陽明は〈事上磨練〉によって静坐を止揚した。幕末の儒者楠本端山は,静坐中,線香の灰が香炉に落ちるのを見て,万物一体を悟ったという。
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普及版 字通 「静坐」の読み・字形・画数・意味

【静坐】せいざ

静かにすわる。〔韓非子、十過〕衞の靈~夜にして新聲を鼓するを聞きて、之れを(よろこ)ぶ。~乃ち師涓(しけん)を召して、之れにげて曰く、~子我が爲に聽きて之れを寫せと。師涓曰く、と。因りて靜坐して琴を撫して、之れを寫す。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「静坐」の意味・わかりやすい解説

静坐
せいざ

臍下丹田(せいかたんでん)に力を込め鼻端を注視して内省する、中国近世の新儒教の修養論の一つ。道教の坐忘、仏教の坐禅なども所作は類似するが、静坐の特色は、静澄な場において内省し、人間は本来完全であること、社会的存在であることを覚醒(かくせい)し、万物一体の仁による大同社会の実現を理想とするところにある。朱子が「半日静坐、半日読書」を生活信条としたことは著名。明(みん)末の高攀竜(こうはんりゅう)(忠憲(ちゅうけん)、1562―1626)、幕末の楠本端山(くすもとたんざん)(1828―83)が静坐論を高唱した。

田公平]

『岡田武彦著『坐禅と静坐』(1970・桜楓社)』

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世界大百科事典(旧版)内の静坐の言及

【未発】より

…道学者の到達した結論は,〈未発〉こそ心の本源であり,ちょうど草木の根をしっかり培養すれば葉が茂り実が成るように,この本源を養えば感情の動きは調和を得,自己の主体性は現実の中に埋没しない,というものだった。その具体的な方法が〈静坐〉にほかならない。程子兄弟をはじめ,楊時,羅従彦,李侗(りとう)などは熱心に静坐を実践している。…

※「静坐」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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