納曾利(読み)なそり

改訂新版 世界大百科事典 「納曾利」の意味・わかりやすい解説

納曾利 (なそり)

雅楽舞楽曲名高麗こま)楽の高麗壱越(いちこつ)調。二人舞で走舞(はしりまい)(童舞として舞うこともある)。納蘇利とも書き,別名を双竜舞という。1人で舞うこともあるが,その時は一般に《落蹲(らくそん)》と呼ぶ。番舞(つがいまい)は《陵王》。この曲用の別装束,毛べりの裲襠装束(緑系)に身をつつみ,銀色の目と牙をもつ青色の面をつけて,銀色の桴(ばち)を右手に舞う。2匹の竜(雌雄の竜ともいう)がたわむれるようすを舞にしたものというが,他の高麗楽の多くと同様にその伝来については不明。平安時代には競馬や相撲の節会右方(うほう)が勝つとこの舞が必ず舞われた(左方(さほう)が勝つと《陵王》)。《納曾利》は右方の走舞の代表とされる。童舞の時は,面をつけずに頭に天冠を用いる。2人の舞人が対角線上で飛びはねたり,背中合せに近寄ったり,背中合せのまま大きく輪をつくって舞うなど,二人舞独特の動きがある。演奏次第は,高麗小乱声-破(揚拍子,登場および当曲舞)-急(唐拍子,当曲舞および退場)。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「納曾利」の意味・わかりやすい解説

納曾利【なそり】

納蘇利とも書く。雅楽の舞楽の曲名。右方に属し,高麗楽(こまがく)を用いる。舞人は2人(時に1人)で,竜面をつけて舞い,双竜舞ともいう。破と急の部分が伝えられており,陵王答舞としてしばしば舞われる。
→関連項目舞楽面

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「納曾利」の意味・わかりやすい解説

納曾利
なそり

雅楽のなかの高麗 (こま) 楽の曲名。「納蘇利」とも書く。高麗壱越 (いちこつ) 調に属する。曲の由来は明らかでない。2人舞。2頭の竜が舞い戯れるさまをかたどったものといわれ,『双竜舞 (そうりゅうのまい) 』の別称もある。笛の『小乱声 (こらんじょう) 』という前奏曲に続いて,この曲の破と急が舞われる。音楽もその舞もリズミカルで変化に富んでおり,曲の構成も整った名曲である。舞人は裲襠 (りょうとう) 装束に,長く毛を垂らした濃い緑色の面をつけて,細長い銀色の桴 (ばち) を持つ。正式には左方 (さほう) の『陵王』という曲と対をなして舞われる。『納曾利』を1人で舞うこともあり,このときの舞は『落蹲 (らくそん) 』という。なお春日大社に伝承される『納曾利』は1人舞で,『落蹲』のほうが2人舞である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android